繊維くずは産業廃棄物になる?建設工事で発生する場合の考え方

建設現場や工場、オフィスなどでは、布、カーペット、畳、ロープなど、さまざまな繊維製品が廃棄されます。
このとき、
「布だから全部“繊維くず”になる?」
「解体工事で出たカーペットは産業廃棄物?」
「ポリエステルの布も繊維くず?」
「会社で不要になった作業着はどう処理する?」
と迷うことがあります。
結論からいうと、
繊維製品が廃棄物になったからといって、すべて産業廃棄物の「繊維くず」になるわけではありません。
産業廃棄物の「繊維くず」は、紙くず・木くずと同じように、排出する業種や発生原因が限定されている品目です。
さらに重要なのが、
産業廃棄物の「繊維くず」は、基本的に天然繊維くずを対象としている
という点です。
ポリエステル、ナイロン、アクリルなどの合成繊維くずは「廃プラスチック類」として扱われます。
したがって、同じ「布」や「カーペット」に見えても、
- 何の素材でできているのか
- どの事業から発生したのか
- 建設工事に伴って発生したのか
によって産業廃棄物の品目が変わることがあります。
この記事では、産廃業界での実務経験を持つ行政書士が、
- 産業廃棄物の「繊維くず」とは何か
- 繊維くずが産業廃棄物になる業種
- 建設工事で発生する繊維くず
- 畳・カーペットの扱い
- 天然繊維と合成繊維の違い
- オフィスから出る衣類・布類の考え方
- 収集運搬・処分を委託するときの注意点
について分かりやすく解説します。
繊維くずは「業種指定」のある産業廃棄物
産業廃棄物には、
どの業種から発生しても産業廃棄物になるもの
と、
特定の業種・工程から発生した場合に産業廃棄物となるもの
があります。
例えば、
- 廃プラスチック類
- 金属くず
- 廃油
などは、基本的に排出業種を問いません。
一方、
- 紙くず
- 木くず
- 繊維くず
- 動植物性残さ
などには業種指定があります。
そのため、
「会社から出た布だから産業廃棄物の繊維くず」
とは限りません。
どのような繊維くずが産業廃棄物になる?
産業廃棄物の「繊維くず」に該当する代表的なものは、
- 建設業に係るもの
- 繊維工業に係るもの
です。
建設業については、
工作物の新築、改築または除去に伴って発生したもの
に限られます。
また、繊維工業についても、衣服その他の繊維製品製造業は対象から除かれています。
そして、産業廃棄物の「繊維くず」として対象になるのは、
- 畳
- じゅうたん
- 木綿くず
- 羊毛くず
などの天然繊維くずです。
ここが廃プラスチック類との重要な境界になります。
天然繊維とは?
天然繊維とは、植物や動物など自然由来の繊維です。
代表的なものには、
植物繊維
- 綿(コットン)
- 麻
- い草
などがあります。
動物繊維
- 羊毛(ウール)
- 絹(シルク)
などがあります。
これらが一定の業種・工程から廃棄物として発生した場合に、産業廃棄物の**「繊維くず」**となります。
合成繊維は「繊維くず」ではなく廃プラスチック類
ここは特に間違えやすいポイントです。
例えば、
- ポリエステル
- ナイロン
- アクリル
などは、見た目は布ですが、石油などを原料とする合成繊維です。
これらの合成繊維くずは、産業廃棄物の分類では通常、
廃プラスチック類
として扱われます。
つまり、
天然繊維 → 条件を満たせば「繊維くず」
合成繊維 → 「廃プラスチック類」
という違いがあります。
廃プラスチック類については、廃プラスチック類とは?具体例と産廃処理で注意するポイントで詳しく解説しています。
「布なら繊維くず」は間違い
日常的には、
「布=繊維」
という感覚があります。
しかし、産業廃棄物の品目を判断するときには、見た目だけで決めることはできません。
例えば、
綿100%の布
天然繊維です。
排出業種・発生工程が繊維くずの対象であれば、
繊維くず
となります。
ポリエステル100%の布
合成繊維なので、
廃プラスチック類
となります。
綿とポリエステルの混紡
複数の素材からできているため、素材構成や排出状態を確認したうえで判断する必要があります。
「布」と一括りにせず、材質を確認することが大切です。
建設工事から発生する繊維くずは産業廃棄物
建設業の場合、
工作物の新築・改築・除去に伴って発生した天然繊維くず
は産業廃棄物です。
例えば、
- 畳
- 天然繊維製のじゅうたん
- 天然繊維製の内装材
- その他の天然繊維製建材
などが考えられます。
解体工事だけではなく、
- 新築
- 改築
- 増築
- 除去
に伴って発生するものも対象になります。
宮城県では「本畳」が具体例
宮城県は、産業廃棄物の具体例として、
建設工事により排出される「本畳」
を繊維くずとして挙げています。
本畳は、い草や稲わらなどの天然素材を主体として作られているため、建設工事の解体・改修等に伴って廃棄される場合には、産業廃棄物の繊維くずとして扱われます。
ただし、現在の畳にはさまざまな種類があります。
すべての畳が「繊維くず」とは限らない
現代の畳には、
- 稲わらを使用した本畳
- 発泡スチロールを芯材に使用した畳
- 木質繊維板を使用した畳
- 合成樹脂を使用した畳表
など、さまざまな製品があります。
そのため、
「畳だから全部、繊維くず」
と判断するのは適切ではありません。
例えば、発泡スチロールを芯材に使用している畳であれば、
- 繊維くず
- 廃プラスチック類
など複数品目の混合物として判断する必要がある場合があります。
実際の材質を確認しましょう。
カーペット・じゅうたんは何の産業廃棄物?
カーペットも、素材によって品目が変わる代表例です。
ウールなど天然繊維のカーペット
建設工事に伴って発生し、天然繊維を主体とする場合には、
繊維くず
となることがあります。
ポリエステル・ナイロン製カーペット
合成繊維なので、
廃プラスチック類
として扱われます。
裏面に樹脂・ゴムなどが付いている場合
実際のカーペットには、
- 天然繊維
- 合成繊維
- 合成ゴム
- 樹脂
など複数素材が使用されていることがあります。
この場合は、単純に「繊維くず」だけではなく、複数品目の混合物として確認する必要があります。
ロープ・ひも類も材質を見る
工事現場や工場では、ロープやひも類も廃棄されます。
例えば、
麻・綿など天然繊維製
排出業種などの条件を満たせば、
繊維くず
となります。
ナイロン・ポリエステル・ポリプロピレン製
廃プラスチック類
です。
見た目が同じロープでも、材質によって品目が違います。
建設現場の作業服やタオルは「工事の繊維くず」?
建設現場で使用した、
- 作業服
- タオル
- 軍手
- 雑巾
などが不要になることがあります。
しかし、
建設現場から排出されたからといって、すべて建設業に係る繊維くずになるわけではありません。
重要なのは、工作物の新築・改築・除去に直接伴って発生した廃棄物なのかという点です。
現場作業員の日常使用によって不要になった衣類等については、工事から直接発生した建設廃棄物とは区別して考える必要があります。
また、合成繊維製であれば、材質上は廃プラスチック類が問題になります。
一般オフィスから出る古着・布類はどうなる?
例えば一般的な会社が、
- 綿製の制服
- ウール製の毛布
- 天オル
- カーテン
などの天然繊維製品を廃棄した場合を考えてみます。
その会社が建設業の対象工程や繊維工業などの指定業種に該当しなければ、天然繊維部分については、通常、産業廃棄物の「繊維くず」には該当せず、事業系一般廃棄物として扱われることになります。
一方、ポリエステルなどの合成繊維製品については、産業廃棄物の廃プラスチック類に該当する可能性があります。
つまり、
同じ会社から捨てる衣類でも、材質によって廃棄物区分が異なる
ことがあります。
衣服製造業から出る天然繊維くずは?
「繊維関係の会社なら全部産業廃棄物の繊維くず」
と思うかもしれません。
しかし、産業廃棄物の繊維くずについては、繊維工業のうち衣服その他の繊維製品製造業は除かれています。
そのため、衣服製造業だからといって、その事業から発生する天然繊維くずが当然に産業廃棄物の「繊維くず」になるとは限りません。
一方、合成繊維の裁断くずなどは、材質上廃プラスチック類に該当します。
このように、繊維関係の事業者でも、
- 業種
- 製造工程
- 天然繊維か合成繊維か
を確認する必要があります。
建設混合廃棄物に繊維くずが混ざった場合
解体工事では、
- 繊維くず
- 木くず
- がれき類
- 廃プラスチック類
- 金属くず
- ガラスくず等
などが同時に発生します。
これらを一つのコンテナにまとめると、建設混合廃棄物となる場合があります。
例えば、
天然繊維製カーペット+木くず+廃プラスチック類
が混ざっていれば、収集運搬業者・処分業者についても、それぞれ必要な許可品目を確認する必要があります。
建設混合廃棄物については、建設混合廃棄物とは?許可品目・分別・処理委託の注意点で詳しく解説しています。
できるだけ現場で分別する
建設工事では、廃棄物をできるだけ発生段階で分別することが重要です。
例えば、
- 畳
- カーペット
- 木くず
- 廃プラスチック類
- がれき類
- 金属くず
などを分けて保管します。
繊維製品は、
見た目だけでなく材質も確認する
ことがポイントです。
特に畳・カーペットなどの複合製品は、処理施設によって受入条件が異なることがあります。
建設工事では元請業者が排出事業者
建設工事に伴って発生する産業廃棄物については、原則として元請業者が排出事業者です。
例えば、
発注者
↓
元請A社
↓
内装工事を行う下請B社
という工事で、下請B社が古いカーペットや畳を撤去したとしても、原則として元請A社が排出事業者となります。
元請業者は、
- 廃棄物の品目を判断する
- 適切に分別する
- 必要な許可を持つ処理業者へ委託する
- 委託契約書を締結する
- マニフェストを管理する
必要があります。
元請・下請と産廃処理については、元請・下請で産廃許可はどう変わる?排出事業者責任と下請運搬の特例をご覧ください。
収集運搬業者の許可証では何を見る?
産業廃棄物の繊維くずを収集運搬業者へ委託するときには、許可証を確認します。
少なくとも、
- 産業廃棄物収集運搬業許可がある
- 「繊維くず」が事業範囲に含まれている
- 必要な地域の許可がある
- 許可期限が有効である
- 積替え保管を行う場合は、その内容が許可されている
ことを確認しましょう。
例えば、天然繊維製の畳を委託したいのに、収集運搬業者が「繊維くず」の許可を持っていなければ、その許可では運搬できません。
処理業者の許可証の見方については、産廃業者の許可証はどこを見る?許可品目・期限・積替え保管の確認方法で詳しく解説しています。
合成繊維なら「廃プラスチック類」の許可を確認
一方、ポリエステルやナイロンなどの合成繊維であれば、
「繊維くず」ではなく「廃プラスチック類」
を確認します。
例えば、
「カーペットを運んでもらいたい」
というだけでは、必要な許可品目を判断できないことがあります。
天然繊維製なのか、合成繊維製なのかを確認したうえで、
- 繊維くず
- 廃プラスチック類
など、実際の廃棄物に対応する許可を確認します。
処分業者は処分方法まで確認する
処分業者についても、単に「繊維くず」の許可があるかだけではなく、実際の処分方法を確認します。
例えば、
- 破砕
- 焼却
などです。
畳やカーペットのような大型の廃棄物では、中間処理施設で破砕した後、素材ごとに分別・処理する場合もあります。
処理施設によって、
- 畳は受入可
- カーペットは不可
- 金属等の異物を除去してから搬入
などの受入条件が設定されている場合もあります。
許可証だけでなく、実際の施設の受入条件も確認しましょう。
委託契約書・マニフェストにも正しい品目を記載する
繊維くずを処理業者へ委託するときには、委託契約書とマニフェストにも正しい品目を反映します。
例えば実際には、
繊維くず+廃プラスチック類
の複合物なのに、
契約書やマニフェストを、
「繊維くず」のみ
にするのは適切ではありません。
重要なのは、
実際の廃棄物
=処理業者の許可
=委託契約書
=マニフェスト
を一致させることです。
繊維くずでよくある勘違い
「布なら全部、繊維くず」
産業廃棄物の繊維くずは、基本的に天然繊維くずです。
ポリエステルやナイロンなどの合成繊維は廃プラスチック類です。
「会社から出た古着は全部産業廃棄物」
天然繊維製品は、排出業種によっては事業系一般廃棄物になる場合があります。
「建設会社から出た布類はすべて繊維くず」
建設工事の新築・改築・除去に伴って発生したものかどうかを確認する必要があります。
「畳はすべて繊維くず」
本畳など天然素材を主体とするものは繊維くずとなりますが、発泡スチロールなどを使用した畳では複数品目の確認が必要です。
「カーペットは全部繊維くず」
合成繊維製カーペットは廃プラスチック類です。
材質確認が必要です。
繊維くずを処理するときのチェックリスト
廃棄物そのもの
□ 天然繊維か合成繊維か確認した
□ 複数の素材が使われていないか確認した
□ 畳・カーペット等の材質を確認した
□ 金属・樹脂等の付着物を確認した
発生原因・業種
□ 建設工事に伴って発生したものか確認した
□ 繊維工業の対象業種から発生したものか確認した
□ 工事・製造工程と関係のない日常ごみではないか確認した
収集運搬業者
□ 天然繊維の場合は「繊維くず」の許可を確認した
□ 合成繊維の場合は「廃プラスチック類」の許可を確認した
□ 必要な地域の許可がある
□ 許可期限が有効である
処分業者
□ 対象品目を処理できる
□ 実際の処分方法が許可されている
□ 畳・カーペット等を受け入れられる
□ 複合素材の処理方法を確認した
契約・マニフェスト
□ 委託契約書の品目が正しい
□ 処理業者の許可と一致している
□ マニフェストに実際の品目を反映している
□ 処理終了まで確認している
産業廃棄物の種類をもっと詳しく見る
産業廃棄物は、品目によって許可の範囲や処理方法、一般廃棄物との区分などが異なります。
まず全体像を確認したい方は、産業廃棄物20種類とは?品目一覧と判断方法をご覧ください。
個別の品目については、以下の記事で詳しく解説しています。
- 廃プラスチック類とは?具体例と産廃処理で注意するポイント
- がれき類とは?コンクリートくずとの違いを分かりやすく解説
- ガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くずとは?具体例と許可品目
- 木くずはすべて産業廃棄物?業種指定と建設工事の木くずを解説
- 紙くずは産業廃棄物になる?事業系一般廃棄物との違い
- 繊維くずは産業廃棄物になる?建設工事で発生する場合の考え方
- 金属くずとは?スクラップとの違いと有価物になる場合の考え方
- 廃油とは?産業廃棄物になる油と特別管理産業廃棄物になる油
- 汚泥とは?産業廃棄物としての判断が難しい理由を解説
- 廃石膏ボードの処理方法|管理型最終処分場・リサイクル時の注意点
まとめ|「布かどうか」より素材と発生原因を見る
産業廃棄物の「繊維くず」を判断するときには、
「布・繊維製品だから繊維くず」
と考えないことが重要です。
産業廃棄物の繊維くずには、主に、
・建設業に係る天然繊維くず
・一定の繊維工業に係る天然繊維くず
が該当します。
代表例として、
・本畳
・天然繊維製じゅうたん
・木綿くず
・羊毛くず
などがあります。
一方、
ポリエステル、ナイロン、アクリルなどの合成繊維くずは「廃プラスチック類」
です。
そのため、例えばカーペットを処理する場合でも、
ウール製 → 繊維くずの可能性
ポリエステル製 → 廃プラスチック類
という違いがあります。
さらに一般的なオフィスなどから排出される天然繊維製品は、指定業種・工程に該当しなければ、事業系一般廃棄物となる場合があります。
つまり繊維製品を処理するときには、
「何の製品か」だけではなく、
「天然繊維か合成繊維か」
「誰が、どの事業・工程から排出したか」
まで確認することが大切です。
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あさぎ行政書士事務所では、産業廃棄物収集運搬業・処分業の許可申請だけでなく、
- 繊維くず・廃プラスチック類などの品目確認
- 産業廃棄物と事業系一般廃棄物の区分整理
- 処理業者の許可証確認
- 産業廃棄物処理委託契約書の確認
- 建設・解体業者向けの産廃実務相談
にも対応しています。
「撤去した畳が何の産業廃棄物になるか分からない」
「カーペットを繊維くずとして処理してよいのか確認したい」
「現在の収集運搬業者の許可で運べるのか分からない」
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