産業廃棄物処理委託契約書とは|法定記載事項・二者契約・保存期間を解説【2026年改正対応】

産業廃棄物の回収を依頼するとき、「処理業者から渡された契約書に押印している」「ひな形を使っている」というだけで、内容の確認を終えていないでしょうか。
産業廃棄物処理委託契約書では、法律で定められた事項を記載し、委託先の許可内容と実際の処理ルートを照合する必要があります。マニフェストを交付していても、委託契約書の代わりにはなりません。
この記事では、契約書が必要な場面、二者契約の原則、法定記載事項、許可証の添付、保存期間、2026年施行の改正を解説します。現在使用している契約書の確認にもお役立てください。
産業廃棄物処理委託契約書とは
産業廃棄物処理委託契約書は、排出事業者が収集運搬や処分を他人に委託するときに、委託する業務と条件を定める契約書です。
まず、次の5点を押さえてください。
- 廃棄物を引き渡す前に、書面で契約を締結する
- 収集運搬業者と処分業者が別会社なら、それぞれと直接契約する
- 法定記載事項を記載し、許可証の写しなどを添付する
- 契約内容を、許可内容・実際の処理ルート・マニフェストと照合する
- 契約書と添付書類を、契約終了後5年間保存する
ひな形は契約書作成の土台になりますが、品目、数量、運搬先、処分方法、料金などは自社の委託内容に合わせて記載します。
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委託契約書は、廃棄物を引き渡す前に締結する
契約は、収集運搬や処分を委託する前に締結します。回収後に日付をさかのぼって契約書を作成しても、契約を締結せずに委託した事実を解消できるわけではありません。
次のような事情があっても、契約書を省略できる理由にはなりません。
- 排出量が少ない、又は一回限りの回収である
- 以前から取引している処理業者である
- 見積書、注文書、請求書を受け取っている
- マニフェストを交付している
スポット回収の場合も、委託先、廃棄物の種類、処理方法などを確認し、必要な契約を先に整えます。
収集運搬業者と処分業者には、それぞれ直接委託する
収集運搬と処分を別会社へ依頼する場合、排出事業者は各業者と直接、委託契約を締結します。
| 委託する業務 | 契約当事者 |
|---|---|
| 収集運搬 | 排出事業者と収集運搬業者 |
| 処分 | 排出事業者と処分業者 |
収集運搬業者が処分先を紹介した場合でも、排出事業者自身が処分業者の許可や委託内容を確認し、処分業者と契約する必要があります。
同じ事業者が必要な収集運搬業許可と処分業許可を持ち、両方の業務を受託する場合は、排出事業者とその事業者の二者間で、運搬・処分の内容を一通の契約書にまとめられます。自社で処分場まで運搬する場合は、処分業者との処分委託契約を締結します。
三者が署名する契約書を使用している場合の確認点は、産廃処理委託の三者契約は禁止?二者契約の原則と正しい契約方法で解説しています。
委託契約書に必要な法定記載事項
収集運搬・処分に共通する事項
収集運搬契約と処分契約に共通する主な記載事項は、次のとおりです。該当する情報を、実際の委託内容に合わせて記載します。
| 記載事項 | 確認するポイント |
|---|---|
| 廃棄物の種類・数量 | 委託品目を具体的に定め、数量又は予定数量を記載する |
| 契約の有効期間 | 開始・終了時期、更新の条件を明確にする |
| 委託料金 | 単価、計算方法、支払条件を確認できるようにする |
| 受託者の事業の範囲 | 委託する業務が許可・認定等の範囲に含まれるか照合する |
| 廃棄物の性状・荷姿 | 固体・液体、容器、フレコン、ドラム缶など実際の状態を伝える |
| 保管中の性状変化 | 腐敗、揮発など、通常の保管で起こる変化を伝える |
| 他の廃棄物との混合による支障 | 発熱、発火、有害ガスの発生などの情報を伝える |
| 含有マークに関する情報 | 対象製品にJIS C 0950の含有マークが付いている場合、その情報を記載する |
| 石綿・水銀関係の情報 | 石綿含有産業廃棄物、水銀使用製品産業廃棄物、水銀含有ばいじん等が含まれる場合、その旨を記載する |
| 一定のPRTR対象物質の情報 | 2026年改正の対象に該当する場合、物質名と量又は割合を伝える |
| その他取扱い上の注意 | 漏えい防止、禁水、必要な保護具など適正処理に必要な情報を伝える |
| 情報変更時の伝達方法 | 性状等が変わったときの連絡方法を定める |
| 受託業務終了時の報告 | 処理終了の報告方法を定める |
| 契約解除時の未処理廃棄物の取扱い | 残っている廃棄物をどのように取り扱うか定める |
料金表や廃棄物情報を別紙に記載する場合は、どの別紙が契約の一部なのか分かるようにし、契約書と一緒に管理します。
収集運搬契約に追加する事項
- 運搬の最終目的地の所在地
- 積替え又は保管を行う場合、その場所の所在地
- その場所で保管できる廃棄物の種類と積替えのための保管上限
- 安定型産業廃棄物を積替え又は保管する場合、他の廃棄物との混合の可否等
運搬の最終目的地には、通常、搬入する処分施設の所在地を記載します。実際の搬入先と一致しているか確認してください。
処分契約に追加する事項
- 処分又は再生を行う場所の所在地、方法、施設の処理能力
- 最終処分以外の処分を委託する場合、最終処分の場所、方法、施設の処理能力
- 法定の許可を受けて輸入された産業廃棄物を処分等する場合、その旨
中間処理を委託する場合は、搬入先の中間処理施設に加え、その後の最終処分に関する情報も確認します。処分方法や処理能力は、許可証の内容と照合します。
2026年改正|一定のPRTR対象物質の情報伝達が追加
2026年1月1日から、一定の排出事業者が処理を委託する場合、廃棄物に含まれ、又は付着している第一種指定化学物質の名称と量又は割合を、委託契約書で伝える義務が追加されました。
対象は、化管法(PRTR法)の「第一種指定化学物質等取扱事業者」が、同法に基づいて排出量・移動量を把握すべき物質を含む廃棄物を委託する場合です。すべての排出事業者・廃棄物に一律に適用される改正ではありません。
環境省通知では、廃棄物の重量に占める物質の割合が1%以上、特定第一種指定化学物質は0.1%以上の場合を対象としています。量や割合は必ずしも実測値に限られず、文献値や含有率等による算出・推定、幅を持たせた記載も可能です。
施行時点で締結済みの契約には、契約更新までの経過措置があります。自動更新の時期に加え、単価改定など法的拘束力のある覚書で契約内容を変更する場合も、改正後の対応が必要となる点に注意してください。
必要な情報をWDSなどの別紙で伝える場合は、契約書との関係を明確にします。改正の対象外でも、適正処理に必要な危険・有害情報を伝えることは引き続き重要です。
詳しくは、PRTR対応支援|排出事業者の届出・委託契約書・社内教育で解説しています。
契約書には、許可証の写しなどを添付する
許可業者に委託する場合は、委託する業務が許可の範囲に含まれることを確認し、許可証の写しを契約書に添付します。認定制度などに基づく委託では、その資格と事業範囲を証する書面を確認します。
| 収集運搬業者の確認点 | 処分業者の確認点 |
|---|---|
| 積込み場所・荷下ろし場所に必要な許可があるか | 搬入する処分施設に対応する許可があるか |
| 委託品目が許可の対象に含まれるか | 委託品目・処分方法が許可の対象に含まれるか |
| 積替え保管の有無や限定条件が合っているか | 施設の所在地・処理能力が契約内容と一致するか |
| 現在の許可状態を確認できるか | 現在の許可状態と最終処分に関する情報を確認できるか |
特別管理産業廃棄物を委託する場合は、特別管理産業廃棄物に対応する許可等が必要です。通常の産業廃棄物の許可だけで判断しないようにします。
契約中に許可が更新・変更されたときは、新しい許可証を受け取り、契約の見直しが必要か確認します。有効期限が過ぎている場合は、更新申請中の取扱いも含め、現在の許可状態を確認してください。
委託契約書の保存期間は、契約終了後5年間
委託契約書と添付書類は、契約が終了した日から5年間保存します。契約を締結した日から5年間ではありません。
自動更新などで契約が継続している間は、契約終了を起点とする保存期間は始まりません。契約の終了日を管理し、保存期限を判断します。
覚書、別紙、許可証、WDSなどは、どの契約に関係する資料か分かるようにまとめて管理すると、変更履歴を確認しやすくなります。
マニフェストを交付していても、委託契約書は必要
委託契約書とマニフェストは、役割が異なる書類です。
| 項目 | 委託契約書 | マニフェスト |
|---|---|---|
| 主な役割 | 委託する業務・条件を定める | 引渡し後の運搬・処分の状況を確認する |
| 作成・交付等の時期 | 処理を委託する前に締結する | 紙は引渡し時に交付し、電子は法定期限内に登録する |
| 管理の単位 | 契約期間・委託関係ごと | 廃棄物の引渡しごと |
品目、委託先、運搬先、処分方法などを両方の書類で照合します。契約で予定数量を定めている場合は、マニフェストの各回の実績数量と区別して管理します。
処分先や委託品目を変更するときは、新たな内容で処理を委託する前に、契約書や変更書面を整えます。
よくある委託契約書の不備
契約書と許可証の品目・処分方法が合っていない
ひな形に複数の品目が並んでいても、そのすべてを処理業者が受託できるとは限りません。例えば、契約書には「破砕」と記載されているのに、委託先の許可は別の処分方法のみ、という不一致がないか確認します。
運搬先・処分施設・最終処分先が古いまま
取引先から搬入先変更の連絡を受けても、契約書が更新されていない場合があります。実際の処理ルート、契約書、マニフェストを並べて確認すると、変更漏れを見つけやすくなります。
数量や料金の決め方が確認できない
数量の単位、単価、計算方法などを整理し、必要に応じて別紙の数量表・料金表を契約の一部として位置付けます。運搬料金と処分料金も、委託先ごとに確認できるようにします。
許可証や廃棄物情報が更新されていない
許可更新後も古い許可証しか保管していない、廃棄物の成分や荷姿が変わっても情報を伝えていない、といった状態を見直します。契約更新日だけでなく、許可期限や性状変更時の確認手順も定めます。
契約前に回収している・契約関係を任せきりにしている
急な回収でも契約を先に締結します。収集運搬業者に調整を依頼する場合も、排出事業者自身が処分業者と直接契約しているか、委託先を把握しているか確認してください。
ひな形を使っているけれど、記載内容に不安はありませんか?
「許可証と契約書が合っているか分からない」「処分先が変わったが契約書を直していない」など、現在の契約書の点検からご相談いただけます。
あさぎ行政書士事務所では、産廃業界での実務経験を踏まえ、契約書・許可証・処理ルートを照合し、確認した問題点を整理して修正案を作成します。新規作成にも対応します。
| 支援内容 | 報酬目安(税込) |
|---|---|
| 既存契約書の点検・修正案作成 | 22,000円~/1契約 |
| 委託契約書の新規作成(収集運搬又は処分) | 33,000円~/1契約 |
全国対応・1契約から承ります。契約数や処理ルート、確認内容に応じて事前にお見積りします。実費が発生する場合は別途ご案内します。
特別管理産業廃棄物とWDSの注意点
特別管理産業廃棄物を委託する場合は、種類、数量、性状、荷姿、取扱い上の注意事項を、あらかじめ文書で処理業者に通知します。
汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリなど、外観だけでは性状や危険性が分かりにくい廃棄物では、廃棄物データシート(WDS)を用いた情報伝達が役立ちます。
環境省はWDSガイドライン第3版と様式を公表しています。従来の様式でも必要な情報を満たしていれば使用できますが、PRTR対象物質の情報など、確認項目が不足していないか見直してください。
建設工事では、契約名義と排出事業者を確認する
建設工事に伴って生じた産業廃棄物は、原則として元請業者が排出事業者となります。工事請負契約に廃材処分費が含まれていても、産業廃棄物の委託契約を省略できるわけではありません。
実際の排出事業者、委託契約の名義、マニフェストの交付者に不整合がないか確認します。
委託基準に違反した場合の罰則
| 違反の内容 | 法定刑 |
|---|---|
| 書面契約・法定記載事項等の委託基準に違反した場合 | 3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金、又はその両方 |
| 委託できる者以外へ運搬・処分を委託した場合 | 5年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金、又はその両方 |
不備が見つかった場合の対応は、委託の実態や違反内容によって異なります。また、不適正処理が生じた場合には、一定の要件の下で排出事業者が措置命令の対象となることもあります。
契約書の整備とあわせて、委託後の処理状況も確認してください。地域の条例で委託先の確認が求められる場合があるため、所在地と委託先に応じた取扱いを確認します。
産業廃棄物処理委託契約書のよくある質問
-
少量や一回限りの回収でも、契約書は必要ですか?
-
必要です。産業廃棄物の運搬・処分を他人に委託する場合、数量や回数が少ないことだけを理由に契約書を省略することはできません。
-
業界団体や自治体のひな形を使えば、そのままで大丈夫ですか?
-
ひな形を使用する場合も、実際の委託品目、許可内容、処理ルート、数量、料金、廃棄物情報を反映する必要があります。使用する様式が2026年改正の必要事項に対応しているかも確認します。
-
専ら物を再生業者に委託する場合も、契約書は必要ですか?
-
産業廃棄物に該当する専ら物の処理を委託する場合は、書面契約が必要です。専ら再生利用する古紙・くず鉄・空きびん類・古繊維についての許可やマニフェストの例外と、契約書の要否は分けて判断します。
-
電子契約にできますか?
-
電子契約による作成・保存等も可能です。法定記載事項や添付書類を満たし、保存期間中に必要な内容を確認・出力できる状態を整えます。
-
契約期間を自動更新にしてもよいですか?
-
自動更新条項を設けることは可能です。ただし、契約の更新と処理業者の許可更新は別に管理し、品目・処分先・性状・料金などが変わった場合は契約内容を見直します。
-
既存契約書1契約だけでも、点検を依頼できますか?
-
はい。当事務所では1契約から、点検・修正案作成に対応しています。複数の契約書をまとめて見直す場合や、自社用標準契約書・管理台帳を整備したい場合もご相談ください。
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代表の産廃業での主な経験と実績
- 中間処理施設の技術管理者(有資格)
- 収集運搬・処分業の許認可10年以上
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