熱海土石流災害から考える、産業廃棄物・残土処理の重要性

はじめに

令和3年7月、静岡県熱海市伊豆山地区で大規模な土石流災害が発生しました。

この災害については、自然災害としての側面だけでなく、源頭部付近に造成されていた盛土の存在や、土砂搬入・土地改変行為のあり方が大きな問題となりました。

熱海の事例は、産業廃棄物処理や建設発生土、残土処分に関わる事業者にとって、非常に重い教訓を含んでいます。

「安く処分できればよい」
「知り合いの業者に任せているから大丈夫」
「土だから廃棄物ではない」
「自社の現場から出たものだから問題ない」

このように考えてしまうと、後から大きな法的責任や社会的責任につながる可能性があります。

この記事では、熱海土石流災害をきっかけに、産業廃棄物や残土処理について事業者が注意すべきポイントを、行政書士の視点から解説します。

熱海土石流災害は「単なる自然災害」では済まされなかった

熱海市伊豆山地区の土石流災害では、逢初川の源頭部周辺にあった盛土が問題となりました。

静岡県は、逢初川土石流災害について発生原因調査検証委員会を設置し、専門家による検証を行っています。県の公表資料でも、源頭部の盛土、土砂搬入、土地改変行為に関する多数の公文書が公表されています。

ここで重要なのは、熱海の事例を単純に「不法投棄が原因だった」と言い切るのではなく、

不適切な盛土や土砂搬入が、土石流被害を拡大させた可能性がある事例

として理解することです。

つまり、問題は「廃棄物を捨てたかどうか」だけではありません。

どこに、どのような土砂を、どのような方法で搬入したのか。

その土地は安全性が確保されていたのか。

必要な届出や許可、行政との協議は適切に行われていたのか。

搬入後の管理は適正だったのか。

こうした点が、社会的に厳しく問われることになりました。

《参考》
→ 不法投棄とは?一回でもやったら社会から追放される重罪

「土」だから安全とは限らない

産業廃棄物の相談を受けていると、現場では次のような感覚が残っていることがあります。

「土は廃棄物ではない」
「残土だから産廃許可はいらない」
「埋め戻しに使うなら問題ない」
「山林や空き地に置くだけなら処分ではない」

しかし、実務上はそれほど単純ではありません。

建設工事や解体工事から発生するものには、土砂、がれき類、コンクリートくず、木くず、廃プラスチック類、金属くずなど、さまざまなものが混在することがあります。

見た目は「土」に見えても、実際には廃棄物が混入している場合があります。

また、廃棄物に該当しない建設発生土であっても、どこにでも自由に搬入・堆積できるわけではありません。

土地造成、盛土、埋立て、残土処分については、廃棄物処理法だけでなく、盛土規制法、森林法、都市計画法、農地法、土砂条例、各自治体の残土条例など、複数の法令・条例が関係することがあります。

熱海の災害を受けて、盛土規制は強化された

熱海土石流災害を受けて、国は盛土規制を大きく見直しました。

国土交通省は、令和3年に静岡県熱海市で大雨に伴って盛土が崩落し、大規模な土石流災害が発生したことなどを踏まえ、「宅地造成及び特定盛土等規制法」、いわゆる盛土規制法を令和5年5月26日から施行したと説明しています。

盛土規制法では、宅地、農地、森林など土地の用途にかかわらず、危険な盛土等を包括的に規制する方向へ制度が見直されました。

また、規制区域内で行う盛土等については許可の対象となる場合があり、施工状況の定期報告、中間検査、完了検査なども制度上位置づけられています。

これは、事業者にとって非常に重要です。

今後は、土砂の搬入や盛土について、

「昔からこのようにやっている」
「知り合いの土地に置かせてもらう」
「短期間だけ仮置きする」

という感覚では済まされない場面が増えていくと考えられます。

産業廃棄物処理では「任せたから終わり」ではない

産業廃棄物処理で特に注意すべきなのが、排出事業者責任です。

環境省は、廃棄物処理法において、事業者はその事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任で適正に処理しなければならないと説明しています。

さらに、産業廃棄物処理業者に処理を委託した場合であっても、排出事業者に処理責任があることに変わりはないとされています。

つまり、

「許可業者に頼んだから大丈夫」
「安い業者に任せたから後は知らない」
マニフェストだけ出しておけば問題ない」

という考え方は危険です。

委託先の業者が不適正処理を行った場合、排出事業者側にも責任が及ぶ可能性があります。

場合によっては、行政指導、措置命令、社名公表、取引先からの信用低下など、事業継続に大きな影響が出ることもあります。

《参考》
→ 産廃の重要概念「排出事業者責任」とは?産廃行政書士が解説
→ 産廃マニフェストとは?|産廃専門行政書士が解説

建設業者・解体業者が特に注意すべきポイント

熱海の事例から、建設業者・解体業者・運搬業者が特に注意すべきポイントは次のとおりです。

1. 残土と産業廃棄物を混同しない

建設現場から出るものがすべて産業廃棄物になるわけではありません。

しかし、すべてが単なる残土として自由に扱えるわけでもありません。

土砂に廃棄物が混入していないか、がれき類やコンクリートくず、木くず、廃プラスチック類などが含まれていないかを確認する必要があります。

2. 許可のない運搬・処分をしない

他人の産業廃棄物を収集運搬する場合には、原則として産業廃棄物収集運搬業許可が必要です。

「少量だから」
「元請に頼まれたから」
「いつも付き合いのある会社だから」

という理由で、許可なく運搬できるわけではありません。

特に、解体工事や建設工事では、自社の廃棄物なのか、他人の廃棄物なのか、誰が排出事業者なのかを整理しておくことが重要です。

3. 安すぎる処分費には注意する

産業廃棄物処理では、処分費が極端に安い場合、適正処理がされているのか慎重に確認する必要があります。

適正な処分には、施設の維持管理、人件費、運搬費、処分費、リサイクル費用などがかかります。

相場より著しく安い処理費用には、それなりの理由があるかもしれません。

4. マニフェストと契約書を整備する

産業廃棄物の処理を委託する場合には、委託契約書やマニフェストの管理が重要です。

口約束だけで処理を依頼することは避けるべきです。

また、マニフェストを交付して終わりではなく、最終処分まで適正に完了しているかを確認する意識が必要です。

5. 土砂搬入・盛土は自治体への確認が必要

残土や建設発生土を搬入する場合には、廃棄物処理法だけでなく、盛土規制法や自治体の条例が関係する可能性があります。

特に、山林、農地、傾斜地、谷地形、河川付近などに土砂を搬入する場合には、安全性や法令上の規制を確認しないまま進めるべきではありません。

《参考》
→ 建設業者様向け|産廃収集運搬 許可取得ガイド
→ 解体業者様向け|産廃収集運搬 許可取得ガイド
→ 個人事業主のための許可取得ガイド

    産廃許可は「単なる書類手続き」ではない

    産業廃棄物収集運搬業許可は、単に書類をそろえて申請すればよいというものではありません。

    許可を取得するということは、事業者として産業廃棄物を適正に扱う責任を負うということです。

    そのため、許可申請では、

    といった点が確認されます。

    これらは単なる形式的な要件ではありません。

    不適正処理を防ぎ、生活環境や地域の安全を守るための制度です。

    まとめ

    熱海土石流災害は、産業廃棄物や残土処理に関わる事業者にとって、非常に重い教訓を残しました。

    もちろん、熱海の事例を単純に「不法投棄が原因だった」と言い切ることは適切ではありません。

    しかし、不適切な盛土や土砂搬入、土地改変行為が大きな社会問題となったことは間違いありません。

    建設業者、解体業者、運送業者、排出事業者は、産業廃棄物や残土の処理について、

    「安ければよい」
    「任せればよい」
    「土だから問題ない」

    と考えるのではなく、法令に沿った適正な処理を行う必要があります。

    産業廃棄物収集運搬業許可の取得や、建設現場から出る廃棄物の取り扱いで不安がある場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。

    当事務所では、宮城県・仙台市を中心に、産業廃棄物収集運搬業許可の申請サポートを行っています。

    産業廃棄物の許可が必要か分からない場合や、建設業解体業で廃棄物の運搬を始めたい場合も、お気軽にご相談ください。

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