建設業許可があれば産廃を運べる?産廃収集運搬業許可との違いを解説

建設業者の方から、次のようなご質問をいただくことがあります。
「建設業許可を持っていれば、工事現場から出た廃材も運べますか?」
「自社のダンプで運ぶだけなら、産廃許可はいらないのでは?」
「元請会社から廃材の運搬を頼まれましたが、建設業許可だけで対応できますか?」
結論からいうと、建設業許可を持っていても、それだけで他人の産業廃棄物を運搬できるわけではありません。
建設業許可と産業廃棄物収集運搬業許可は、目的も根拠法令も異なる、まったく別の許可です。
建設工事を行うために建設業許可が必要となる一方で、他人の産業廃棄物を運搬する場合には、原則として産業廃棄物収集運搬業許可が必要です。
この記事では、建設業許可と産廃収集運搬業許可の違い、建設業者が両方の許可を必要とするケース、許可が不要となる自社運搬について解説します。
※この記事では、産業廃棄物収集運搬業許可を「産廃許可」と表記します。
結論:建設業許可だけでは他人の産業廃棄物を運べません
建設業許可は、建設工事を請け負い、適正に施工するための許可です。
一方、産業廃棄物収集運搬業許可は、他人の産業廃棄物を業として収集・運搬するための許可です。
したがって、建設業許可を取得していても、次のような場合には、別途、産廃許可が必要になります。
- 下請業者が元請業者の廃材を処分場へ運ぶ
- 他社の工事現場で発生した産業廃棄物を運ぶ
- 元請会社から廃材の運搬を依頼される
- 関連会社やグループ会社の廃棄物を運ぶ
- 産業廃棄物の運搬を業務として請け負う
反対に、元請業者が、自ら請け負った工事から発生した産業廃棄物を自社の車両で運搬する場合は、原則として産廃許可は必要ありません。
重要なのは、建設業許可の有無だけではなく、「誰が排出事業者で、誰が運搬するのか」です。
建設業許可と産廃収集運搬業許可の違い
| 比較項目 | 建設業許可 | 産業廃棄物収集運搬業許可 |
|---|---|---|
| 根拠法令 | 建設業法 | 廃棄物処理法 |
| 主な目的 | 建設工事の適正な施工を確保する | 産業廃棄物を適正に収集・運搬する |
| 対象となる業務 | 建設工事の請負・施工 | 他人の産業廃棄物の収集・運搬 |
| 許可の範囲 | 許可を受けた建設業の種類 | 許可を受けた産業廃棄物の種類・区域 |
| 主な許可行政庁 | 国土交通大臣または都道府県知事 | 都道府県知事等 |
| 有効期間 | 5年間 | 原則として5年間 |
| 一方の許可で他方を行えるか | 産廃運搬は含まれない | 建設工事の請負は含まれない |
建設業許可を取得していることは、産業廃棄物を運搬する資格があることを意味しません。
同様に、産廃許可を取得していても、建設業許可が必要となる建設工事を自由に請け負えるわけではありません。
それぞれ別の要件に基づいて審査され、別々の許可証が交付されます。
建設業許可を持っていても産廃を運べない理由
建設業許可は、建設工事の適正な施工を確保するための制度です。
許可を受ける建設業は、土木工事業、建築工事業、解体工事業、電気工事業、管工事業などの業種ごとに区分されています。
しかし、これらの許可業種は、産廃許可で運搬できる産業廃棄物の種類とは連動していません。
例えば、解体工事業の建設業許可を持っていても、それだけで次の廃棄物を他社から委託されて運搬できるわけではありません。
- がれき類
- 木くず
- 金属くず
- 廃プラスチック類
- ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず
- 繊維くず
- 汚泥
これらを他人から委託されて運搬するためには、産廃許可を取得し、運搬する廃棄物の種類を許可の事業範囲に含める必要があります。
「解体工事業の許可があるから、解体廃材も運べる」という考え方ではありません。
建設工事では元請業者が排出事業者になります
建設工事に伴って発生する産業廃棄物については、原則として、発注者から工事を直接請け負った元請業者が排出事業者になります。
実際に現場で解体、撤去、掘削などの作業をしたのが下請業者であっても、原則は変わりません。
そのため、次のように考えます。
- 元請業者が自社で運ぶ:自社の産業廃棄物の運搬
- 下請業者が運ぶ:元請業者の産業廃棄物の運搬
- 別の運搬業者が運ぶ:元請業者から委託された産業廃棄物の運搬
下請業者から見ると、自分が作業して発生させた廃材であっても、廃棄物処理法上は原則として元請業者の産業廃棄物です。
したがって、下請業者が現場から廃材を運搬する場合は、原則として産廃許可が必要になります。
元請・下請による責任や委託契約、下請運搬の特例については、元請・下請で産廃許可の必要性は変わる?で詳しく解説しています。
元請業者が自社運搬する場合
元請業者が、自ら請け負った工事から発生した産業廃棄物を、自社の従業員と自社の車両で運搬する場合は、自社運搬に該当します。
この場合は、原則として産業廃棄物収集運搬業許可は必要ありません。
例えば、次のようなケースです。
- 元請業者が自社のダンプで処分場へ運ぶ
- 元請業者の従業員が自社のトラックで運ぶ
- 元請業者が自社の責任で中間処理施設へ搬入する
ただし、許可が不要だからといって、何の規制も受けないわけではありません。
自社運搬であっても、次のような対応が必要です。
- 廃棄物が飛散・流出しないように運搬する
- 車両の両側面に必要な表示を行う
- 運搬する廃棄物などを記載した書面を備え付ける
- 廃棄物の種類に適した車両や容器を使用する
- 処分業者と適切な委託契約を締結する
- マニフェストを適切に交付・管理する
自社運搬の判断と必要な表示・書面については、自社の工事現場から出た廃材の運搬に産廃許可は必要?をご覧ください。
下請業者が運搬する場合は原則として産廃許可が必要です
下請業者が元請業者の工事現場から廃材を運搬する場合、その廃材は原則として元請業者の産業廃棄物です。
下請業者にとっては、他人の産業廃棄物を運搬することになります。
そのため、次のような場合には、原則として産廃許可が必要です。
- 元請から「現場の廃材を処分場まで運んでほしい」と頼まれた
- 下請業者が自社のダンプでがれき類を運ぶ
- 設備工事の下請業者が配管や機器を持ち帰る
- 内装工事の下請業者が廃材を自社置場へ持ち帰る
- 解体工事の下請業者が木くずや金属くずを運ぶ
- 元請の指示で中間処理施設へ搬入する
「元請から頼まれた」「工事契約に含まれている」「運搬費を別に受け取っていない」という理由だけで、許可が不要になるわけではありません。
下請業者が許可を持たずに運搬できる特例もありますが、対象となる工事、請負金額、運搬量、運搬先、契約書への記載など、複数の条件をすべて満たす必要があります。
一般的な下請運搬に広く利用できる制度ではないため、特例を利用する場合は事前の確認が必要です。
関連会社やグループ会社が運ぶ場合
親会社、子会社、兄弟会社などの関係であっても、法人が異なれば別の事業者です。
例えば、A社が元請として排出した産業廃棄物を、同じグループのB社が運搬する場合、B社は他人の産業廃棄物を運搬することになります。
「代表者が同じ」「事務所が同じ」「車両を共同で使用している」といった事情だけで、自社運搬になるわけではありません。
関連会社の廃棄物を運搬する場合も、原則として産廃許可の要否を確認する必要があります。
建設業許可と産廃許可の両方が必要になるケース
建設業者が次のような業務を行う場合は、建設業許可と産廃許可の両方が必要になる可能性があります。
下請として建設工事と廃材運搬を行う場合
下請業者が建設工事を施工し、あわせて元請業者の廃材を処分場まで運搬する場合です。
工事の請負には建設業許可が関係し、他人の産業廃棄物の運搬には産廃許可が関係します。
元請・下請の両方の立場で工事を行う場合
自社が元請となる工事では自社運搬に該当しても、別の工事で下請となれば、同じ車両で運んでも他人の産業廃棄物の運搬になります。
工事ごとに元請・下請の立場を確認しなければなりません。
他社から廃材運搬を依頼される場合
建設工事の施工だけでなく、他社の工事現場から処分場までの運搬も請け負う場合です。
建設業許可とは別に、運搬する産業廃棄物の種類と区域に対応した産廃許可が必要です。
県外の現場や処分場へ運搬する場合
産廃許可は、原則として、積込み場所と荷下ろし場所を管轄する都道府県等の許可を確認します。
例えば、宮城県内の工事現場から福島県内の処分場へ運ぶ場合は、宮城県と福島県の許可が必要になります。
通過するだけの都道府県については、通常、許可は必要ありません。
詳しくは、産業廃棄物を県外へ運搬する場合に必要な許可をご覧ください。
許可の要否を判断するためのチェックポイント
建設業者が廃材を運搬するときは、次の事項を確認します。
- 発注者から工事を直接請け負ったのは誰か
- 自社は元請なのか下請なのか
- 廃棄物の排出事業者は誰か
- 実際に運搬するのは誰か
- 運搬する産業廃棄物の種類は何か
- 積込み場所と荷下ろし場所はどこか
- 自社の許可品目に必要な廃棄物が含まれているか
- 元請業者と書面による委託契約を締結しているか
- マニフェストが適切に交付されるか
- 自社置場へ持ち帰る運用があるか
- 下請運搬の特例に本当に該当するか
「建設業許可がある」「自社のダンプを使う」という点だけでは、産廃許可の要否を判断できません。
工事の契約関係と廃棄物の流れを整理することが重要です。
元請会社から産廃許可の取得を求められたら
元請会社から産廃許可を取得するよう求められた場合は、まず次の事項を確認します。
- 運搬する産業廃棄物の種類
- 工事現場の所在地
- 搬入する処分場の所在地
- 使用する車両
- 講習会の受講状況
- いつまでに許可が必要か
特に注意したいのが、産業廃棄物の種類です。
建設廃材をすべて「がれき類」と考えるのは危険です。
木材は木くず、塩ビ管や養生シートは廃プラスチック類、金属製配管は金属くず、石膏ボードはガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くずに分類されるなど、廃材によって必要な許可品目が異なります。
申請後に品目が不足していることが分かると、追加の変更許可申請が必要になる可能性があります。
建設業者向けの許可申請については、建設業者向け産業廃棄物収集運搬業許可申請サポートをご覧ください。
よくある質問(FAQ)
-
建設業許可に「解体工事業」があれば、解体廃材を運搬できますか?
-
解体工事業の建設業許可だけでは、他人の産業廃棄物を運搬できません。
下請業者として元請業者の解体廃材を運ぶ場合や、他社から運搬を委託される場合は、原則として産廃許可が必要です。
-
自社のダンプで運ぶ場合も産廃許可が必要ですか?
-
誰の産業廃棄物を運ぶのかによって異なります。
元請業者が自ら排出した産業廃棄物を自社で運ぶ場合は原則として許可不要ですが、下請業者が元請業者の廃棄物を運ぶ場合は、原則として産廃許可が必要です。
-
少量の廃材なら許可はいりませんか?
-
少量であることだけを理由に、許可が不要になるわけではありません。
他人の産業廃棄物を業として運搬する場合は、量が少なくても原則として許可が必要です。
-
元請会社から運搬を指示された場合はどうなりますか?
-
元請会社から指示された場合でも、下請業者が許可なしで自由に運搬できるわけではありません。
下請運搬の特例に該当する場合を除き、原則として産廃許可が必要です。
-
グループ会社の廃棄物なら自社運搬になりますか?
-
法人が異なる場合は、原則として自社運搬にはなりません。
代表者や所在地が同じ場合でも、別法人の産業廃棄物を運搬する場合は、産廃許可の要否を確認する必要があります。
-
産廃許可を取得すれば、すべての建設廃材を運べますか?
-
運搬できるのは、許可証の事業範囲に記載された産業廃棄物に限られます。
例えば、許可品目に「がれき類」しか含まれていない場合、木くず、金属くず、廃プラスチック類などを運搬することはできません。
まとめ
建設業許可と産業廃棄物収集運搬業許可は、まったく別の制度です。
重要なポイントは次のとおりです。
- 建設業許可だけでは他人の産業廃棄物を運搬できない
- 建設工事に伴う廃棄物は、原則として元請業者が排出事業者になる
- 元請業者が自社運搬する場合は、原則として産廃許可は不要
- 下請業者が元請業者の廃材を運ぶ場合は、原則として産廃許可が必要
- 自社のダンプを使うことや、少量であることだけでは許可不要にならない
- 建設業許可と産廃許可の両方が必要になる建設業者も多い
- 許可を取得する場合は、廃棄物の種類と必要な都道府県を確認する
建設業者の産廃許可では、元請・下請の関係、運搬する廃棄物、工事現場、処分場、使用車両を申請前に整理することが重要です。
あさぎ行政書士事務所では、産廃業界での実務経験をもとに、許可要否の確認から必要品目の選定、宮城県・隣県への許可申請までサポートしています。
「建設業許可だけで運搬できるのか分からない」「元請から許可取得を求められた」という段階でも、お気軽にご相談ください。

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