
産業廃棄物収集運搬業の許可を受けるには、講習会の修了、経理的基礎、運搬車両・容器などの要件に加え、「欠格要件に該当しないこと」が必要です。
欠格要件に該当すると、新規申請だけでなく、更新許可申請や事業範囲の変更許可申請でも許可を受けられません。さらに、許可取得後に該当した場合は、許可取消しの対象となります。
注意したいのは、確認されるのが代表者だけではないことです。法人の取締役や監査役、一定の支店長・事業所長などに該当者がいると、法人そのものが欠格要件に該当することがあります。
この記事では、産業廃棄物収集運搬業の欠格要件について、対象者、代表的な事由、いわゆる「5年ルール」、申請前後の注意点を解説します。
先に結論
- 刑歴があるだけで、一律・永久に許可を取れないわけではありません。
- 罰金刑は、すべての犯罪が欠格要件になるわけではありません。
- 「5年」の起算日は、犯罪日や逮捕日とは限りません。
- 代表者だけでなく、役員や政令使用人なども確認が必要です。
- 許可取得後に該当した場合も、届出や許可取消しの問題が生じます。
産業廃棄物収集運搬業の「欠格要件」とは
欠格要件とは、申請者が法令に従って産業廃棄物処理業を適正に行えるかを判断するため、廃棄物処理法で定められた基準です。
産業廃棄物は、生活環境や公衆衛生に大きな影響を与える可能性があります。そのため、許可申請の書類がそろっているだけでなく、申請者や関係者に法令上の問題がないことも審査されます。
申請者が欠格要件に該当する場合、都道府県等は許可をすることができません。また、許可業者が後から欠格要件に該当した場合も、法令上、原則として許可取消しの対象となる重大な事項です。
そのため、申請直前に形式的な確認をするのではなく、会社設立時、役員就任時、事業承継時など、早い段階で確認することが重要です。
欠格要件を確認されるのは代表者だけではありません
法人で申請する場合、「社長に問題がなければ大丈夫」とは限りません。主に次の人・法人について確認が必要です。
個人で申請する場合
- 申請者本人
- 政令で定める使用人がいる場合は、その使用人
- 申請者が営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者である場合は、その法定代理人
法人で申請する場合
- 申請法人
- 業務を執行する社員
- 取締役
- 執行役
- 監査役
- 上記に準ずる者
- 政令で定める使用人
- 名称にかかわらず、法人に対して役員と同等以上の支配力を有すると認められる相談役・顧問など
「政令で定める使用人」とは、一般的な従業員全員を指すわけではありません。たとえば、本店・支店の代表者や、継続的に業務を行う事業所において、産業廃棄物の収集運搬等に関する契約を締結する権限を持つ事業所の代表者などが該当します。
また、許可申請書では、発行済株式総数の5%以上を保有する株主や、出資額の5%以上を占める出資者についても、氏名・住所等の記載が求められます。5%以上の株主であることだけで直ちに「役員」となるわけではありませんが、実質的な支配力を持つ人は、肩書にかかわらず確認が必要です。
代表的な欠格要件
欠格要件は細かく規定されています。ここでは、産業廃棄物収集運搬業の申請で特に確認される事由を整理します。
1.心身の故障により業務を適切に行うことができない場合
心身の故障により、産業廃棄物処理業を適切に行うために必要な認知、判断、意思疎通を適切に行えないと認められる場合が対象です。
病名や障害の有無だけで、一律に欠格と判断されるものではありません。実際に業務を適切に行える状態かという観点で判断されます。
2.破産手続開始の決定を受け、復権を得ていない場合
破産手続開始の決定を受け、まだ復権を得ていない人は欠格要件に該当します。
反対に、免責許可決定の確定などにより復権を得ている場合は、過去に破産したという事実だけで、この欠格要件に該当し続けるわけではありません。「破産したら一生許可を取れない」という理解は誤りです。
3.拘禁刑以上の刑を受け、所定の期間を経過していない場合
拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終えた日、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過していない人は、原則として欠格要件に該当します。
2025年6月1日に刑法等の改正が施行され、従来の懲役と禁錮は「拘禁刑」に一本化されました。古い記事にある「禁錮以上」という説明だけでは、現在の制度を正確に表せません。改正前に言い渡された懲役・禁錮の経歴についても、判決内容と経過期間を確認する必要があります。
ここで重要なのは、拘禁刑以上の場合、廃棄物処理法違反に限らず、犯罪の種類を問わず欠格要件となり得る点です。
4.特定の法令違反等で罰金刑を受け、所定の期間を経過していない場合
罰金刑については、どの犯罪でも欠格要件になるわけではありません。主に次の法令違反等で罰金刑を受け、その執行を終えた日、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過していない場合が対象です。
- 廃棄物処理法
- 浄化槽法
- 大気汚染防止法、水質汚濁防止法など、政令で定める生活環境保全関係法令
- 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の一定の規定
- 傷害罪、暴行罪、脅迫罪、背任罪など、法律で指定された刑法上の罪
- 暴力行為等処罰ニ関スル法律の罪
したがって、「罰金を払ったことがあるから申請できない」と即断する必要はありません。反対に、拘禁刑以上の場合と、特定の法令違反による罰金刑の場合を混同しないことが大切です。
なお、交通違反の反則金は、刑事罰である罰金刑とは別のものです。ただし、重大な交通事件により罰金刑や拘禁刑を受けた場合は、刑の内容や他の欠格事由との関係を個別に確認する必要があります。
5.廃棄物処理業等の許可を取り消され、所定の期間を経過していない場合
廃棄物処理法や浄化槽法に基づく一定の許可取消しを受け、取消しの日から5年を経過していない人・法人は、欠格要件に該当します。
法人の許可が取り消された場合は、その法人だけでなく、取消処分に関する聴聞通知があった日前60日以内に役員だった人も対象となることがあります。
また、取消処分を免れる目的で、聴聞通知後に事業の全部を廃止したような場合も、届出の日から5年間、欠格要件となることがあります。その法人の役員や政令使用人だった人まで対象が広がる場合があるため、「会社を閉じれば問題がなくなる」「先に役員を辞めれば必ず回避できる」とは限りません。
6.不正または不誠実な行為をするおそれがあると認められる場合
過去の行政処分、違法行為、反復継続した不適切な業務などから、産業廃棄物処理業に関して不正または不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある場合も、欠格要件となります。
刑の有無だけで判断される項目ではない点に注意が必要です。
7.暴力団員等に該当する場合、または事業を支配されている場合
次のような場合は欠格要件に該当します。
- 暴力団員である人
- 暴力団員でなくなった日から5年を経過していない人
- 暴力団員等が事業活動を支配している個人・法人
役員名簿上に暴力団員等がいない場合でも、実質的に事業活動を支配されていれば対象となります。
「5年」はいつから数えるのか
欠格要件では「5年を経過していない」という基準が多く出てきます。しかし、起算日はすべて同じではありません。
| 欠格事由 | 5年を数える主な起点 |
|---|---|
| 拘禁刑以上の刑 | 刑の執行を終えた日、または執行を受けることがなくなった日 |
| 指定された法令違反等による罰金刑 | 罰金の執行を終えた日、または執行を受けることがなくなった日 |
| 一定の許可取消し | 許可取消しの日 |
| 聴聞通知後の不相当な事業廃止 | 事業廃止の届出日 |
| 元暴力団員 | 暴力団員でなくなった日 |
犯罪を行った日、逮捕された日、判決が言い渡された日から一律に5年を数えるわけではありません。判決書、罰金の納付記録、行政処分通知などを確認し、起算日を特定する必要があります。
執行猶予付き判決も、「実刑ではないから関係ない」とは限りません。執行猶予中は欠格要件との関係が問題になります。期間満了後の扱いは判決内容や時期によって確認が必要なため、自己判断せず、資料をそろえて申請先へ事前相談するのが安全です。
宮城県で申請する場合の確認ポイント
宮城県の産業廃棄物収集運搬業許可申請では、申請者が欠格要件に該当しないことを誓約する書面を添付します。単にチェック欄へ印を付けるだけでなく、法人の役員や政令使用人など、関係者の範囲を確定したうえで確認しなければなりません。
申請前は、次の順序で確認すると整理しやすくなります。
- 個人申請か法人申請かを確認する
- 役員、政令使用人、法定代理人など、法令上の確認対象者を洗い出す
- 5%以上の株主・出資者と、実質的に経営を支配する人を確認する
- 刑事処分、行政処分、破産手続、暴力団との関係の有無を本人ごとに確認する
- 該当する可能性がある場合は、判決書や処分通知等で日付と内容を確認する
- 申請書を提出する前に、許可を担当する自治体へ相談する
欠格要件により不許可となった場合でも、申請手数料は原則として返還されません。講習会の受講や申請書作成を進める前に確認しておくことをおすすめします。
産業廃棄物収集運搬業のほかの許可要件については、産業廃棄物収集運搬業許可の要件もあわせてご覧ください。
許可取得後も欠格要件の確認は必要です
欠格要件は、許可申請時だけ確認すれば終わりではありません。許可取得後に役員が新たに就任した場合や、既存の役員・政令使用人が欠格要件に該当した場合は、会社の許可に影響することがあります。
欠格要件に該当したときは、事由に応じて、2週間以内に欠格要件該当届を提出する必要があります。また、役員等の変更についても所定の変更届が必要です。
「該当した役員を辞任させれば必ず取消しを避けられる」とは限りません。判明した時点で事実関係と時系列を整理し、直ちに許可行政庁へ確認してください。
会社側では、次のようなタイミングで定期的に確認する仕組みを作っておくと安心です。
- 新しい役員や支店長を選任する前
- 株主構成や実質的な経営体制が変わるとき
- 許可更新の準備を始めるとき
- 本人から刑事処分・行政処分等の申告があったとき
- 会社が合併、分割、事業承継を行うとき
欠格要件に関するよくある質問
-
過去に刑事処分を受けていたら、許可は取れませんか?
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必ずしもそうではありません。刑の種類、犯罪の内容、刑の執行が終わった日などによって判断が変わります。拘禁刑以上なのか、罰金刑なのか、法令で指定された犯罪なのかを分けて確認します。
-
罰金刑はすべて欠格要件になりますか?
-
いいえ。罰金刑で欠格要件となるのは、廃棄物処理法、浄化槽法、一定の環境法令、指定された刑法上の罪などに限られます。ただし、拘禁刑以上の場合は犯罪の種類を問わず対象となり得ます。
-
交通違反の反則金を払ったことがあります。申請できますか?
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一般的な交通反則金は刑事罰の罰金刑とは異なるため、それだけで直ちに欠格要件となるものではありません。ただし、重大な交通事件で刑事罰を受けた場合は、処分内容を確認する必要があります。
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過去に自己破産していると許可を取れませんか?
-
破産手続開始の決定を受け、まだ復権を得ていない間は欠格要件に該当します。すでに復権を得ている場合は、過去の破産だけを理由として、この欠格要件に該当し続けるわけではありません。
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執行猶予付きの判決でも影響しますか?
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影響する可能性があります。執行猶予中か、期間が満了しているか、判決が確定した時期や刑の内容はどうかを確認する必要があります。判決書などを用意し、申請先へ事前相談してください。
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取締役ではない株主も確認が必要ですか?
-
許可申請書には、原則として5%以上の株式を保有する株主・出資者の記載が必要です。また、肩書がなくても、役員と同等以上の支配力を持つと認められる人は、法令上の「役員」に含まれる可能性があります。
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許可取得後に役員が欠格要件に該当したらどうなりますか?
-
法人自体が欠格要件に該当し、許可取消しの対象となる可能性があります。届出期限が設けられている事由もあるため、本人や会社だけで判断せず、速やかに許可行政庁へ相談してください。
申請前の確認チェックリスト
- 代表者だけでなく、取締役・監査役・執行役等を確認した
- 政令使用人に当たる支店長・事業所長がいないか確認した
- 5%以上の株主・出資者を整理した
- 実質的に経営を支配する相談役・顧問等がいないか確認した
- 破産手続中で復権を得ていない人がいないか確認した
- 刑事処分を受けた人について、刑の種類と日付を資料で確認した
- 過去の廃棄物処理業等の許可取消しや行政処分を確認した
- 「5年」の起算日を自己判断していない
- 判断が難しい事項を、申請前に許可行政庁へ確認した
まとめ|欠格要件は申請前と役員変更前の確認が重要です
産業廃棄物収集運搬業の欠格要件は、単に「犯罪歴があるか」を確認する制度ではありません。刑の種類、違反した法令、刑や処分が終わった日、許可取消しの有無、対象者の役職・権限などを一つずつ確認する必要があります。
特に法人申請では、代表者だけでなく、役員や政令使用人、実質的に経営を支配する人まで確認範囲が広がります。申請直前に問題が判明すると、申請時期の見直しや役員構成の再検討が必要になることもあります。
行政書士あさぎ事務所では、宮城県を中心とした産業廃棄物収集運搬業許可申請について、確認対象者の整理、必要書類の確認、申請書作成から提出までサポートしています。欠格要件に該当する可能性がある場合は、判決書や処分通知など、内容と日付が分かる資料をご用意のうえご相談ください。
※欠格要件への該当性は、個別の事実関係により判断が異なります。最終的な判断は許可行政庁が行います。刑事事件や法的評価を伴う場合は、必要に応じて弁護士等への相談もご検討ください。

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