マニフェストが返ってこないときはどうする?排出事業者が取るべき対応

産業廃棄物を処理業者へ引き渡した後、
「マニフェストがなかなか返ってこない」
「B2票は戻ってきたけれど、D票が届かない」
「E票が何か月たっても返ってこない」
ということは、産廃実務では決して珍しくありません。
単純な返送忘れや事務処理の遅れという場合もありますが、マニフェストは、排出事業者が委託した産業廃棄物が適正に運搬・処分されたことを確認するための重要な書類です。
そのため、
「そのうち返ってくるだろう」
と放置してはいけません。
一定期間を過ぎてもマニフェストの写しが返送されない場合、排出事業者には処理状況を確認し、必要な措置を講じたうえで、行政庁へ「措置内容等報告書」を提出しなければならない場合があります。
この記事では、産廃業界での実務経験を持つ行政書士が、
- B2票・D票・E票は何を確認する書類なのか
- マニフェストが返ってこないとき、まず何をすべきか
- 90日・60日・180日の期限とは何か
- 期限を過ぎた場合の措置内容等報告書
- 電子マニフェストの場合はどうなるのか
について、実務に沿って解説します。
そもそも「マニフェストが返ってくる」とは?
紙マニフェストを使用して産業廃棄物の処理を委託した場合、排出事業者は産業廃棄物を引き渡す際にマニフェストを交付します。
その後、収集運搬や処分が終了すると、処理業者から排出事業者へマニフェストの写しが返送されます。
一般的な直行用マニフェストでは、排出事業者が主に確認するのは、
- A票
- B2票
- D票
- E票
です。
A票|排出事業者の控え
A票は、排出事業者がマニフェストを交付したときに手元に残す控えです。
後から返送されるB2票・D票・E票と照合するために使用します。
B2票|収集運搬が終了したことを確認
B2票は、委託した産業廃棄物の運搬が終了したことを確認するための票です。
収集運搬業者から排出事業者へ返送されます。
D票|処分が終了したことを確認
D票は、委託した産業廃棄物の処分が終了したことを確認するための票です。
処分業者から排出事業者へ返送されます。
E票|最終処分が終了したことを確認
E票は、最終処分まで終了したことを確認するための票です。
中間処理を経由する場合には、中間処理後に発生した残さなどがさらに処理され、最終処分が終了したことを確認したうえで排出事業者へ返送されます。
つまり、排出事業者にとってマニフェストは、
「廃棄物を業者に渡した記録」だけではなく、「その後どこまで処理されたかを確認する記録」
なのです。
処理業者にはマニフェストを返送する期限がある
紙マニフェストの場合、収集運搬業者や処分業者は、運搬または処分を終了した後、一定期間内にマニフェストの写しを送付する必要があります。
運搬または処分を終了した日から10日以内に、運搬業者または処分業者から排出事業者へマニフェストの写しを送付することとされています。
したがって、通常であれば、
「何か月も待たないとB2票やD票が返ってこない」
というものではありません。
処理が終了しているにもかかわらず、しばらく返送されない場合には、法定の確認期限まで待たず、処理業者へ問い合わせた方がよいでしょう。
マニフェストが返ってこないときの対応
それでは、実際にマニフェストが返ってこない場合、排出事業者はどうすればよいのでしょうか。
順番に確認していきます。
① まず「どの票が返ってきていないのか」を確認する
最初に確認するのは、
B2票・D票・E票のどれが返ってきていないのか
です。
B2票だけ返ってこない
収集運搬終了の確認ができていない状態です。
B2票はあるがD票が返ってこない
運搬は終了しているものの、処分終了の確認ができていない状態です。
B2票・D票はあるがE票が返ってこない
中間処理までは終了しているものの、最終処分終了の確認ができていない状態です。
「マニフェストが返ってこない」と一括りにするのではなく、
処理のどの段階まで確認できているのか
を整理することが重要です。
② A票とマニフェスト番号を確認する
処理業者へ問い合わせる前に、手元にあるA票を確認しましょう。
最低限、
- マニフェスト交付番号
- 交付年月日
- 産業廃棄物の種類
- 数量
- 収集運搬業者
- 運搬先
- 処分業者
を確認します。
同じ処理業者へ毎日のように廃棄物を委託している場合、
「先月の○○のマニフェストが来ていません」
だけでは処理業者側も確認しにくいことがあります。
マニフェスト番号を伝えて問い合わせるとスムーズです。
③ 収集運搬業者・処分業者へ確認する
返送が遅れていることが分かったら、該当する処理業者へ連絡します。
B2票であれば収集運搬業者、D票やE票については処分業者へ確認することになります。
例えば、
「○月○日交付、マニフェスト番号○○○○のD票がまだ届いていません。処分状況を確認していただけますか」
というように問い合わせます。
ここで重要なのは、
「マニフェストを返してください」だけで終わらせないこと
です。
確認したいのは、書類そのものだけではありません。
④ 実際の処理状況を確認する
マニフェストが返ってこない場合、排出事業者が本当に確認すべきなのは、
委託した産業廃棄物がどうなっているのか
です。
B2票が返ってこない場合
- 運搬は終了しているか
- いつ処分場へ搬入したか
- 搬入先は契約した処分場か
- 運搬途中で問題が発生していないか
を確認します。
D票が返ってこない場合
- 処分場へ搬入されているか
- 処分は終了しているか
- 処理が遅れている理由は何か
- 処理施設に問題が発生していないか
などを確認します。
E票が返ってこない場合
- 中間処理後の廃棄物はどこへ行ったのか
- 最終処分は終了しているか
- 最終処分終了情報を中間処理業者が確認しているか
などを確認します。
マニフェスト制度の目的は、紙を回収することではなく、排出事業者が処理の流れを確認することです。
⑤ 単純な「返送忘れ」なのか確認する
実際には、
「処理は終わっているけれど、事務担当者が返送していなかった」
というケースも考えられます。
例えば、
- B2票を発送し忘れていた
- D票を社内で保管したままになっていた
- 郵送先を間違えた
- 担当者変更で処理が止まっていた
- 郵便物が届いていなかった
などです。
処理が適正に終了していることが確認できた場合には、処理業者へ速やかな返送を依頼します。
ただし、
「返送忘れだったから問題ない」
というだけで終わらせず、A票と返送された各票を照合して、
- 廃棄物の種類
- 数量
- 運搬先
- 運搬終了日
- 処分終了日
- 最終処分終了日
などに不自然な点がないか確認しましょう。
90日・60日・180日の期限に注意
マニフェストが返ってこない場合、排出事業者には重要な確認期限があります。
B2票・D票の確認期限
マニフェスト交付の日から、
通常の産業廃棄物:90日以内
特別管理産業廃棄物:60日以内
です。
この期間内にB2票またはD票の送付を受けられない場合には、排出事業者は速やかに処理状況を把握し、必要な措置を講じる必要があります。
E票の確認期限
最終処分終了を確認するE票については、
マニフェスト交付の日から180日以内
が確認期限となります。
整理すると、次のようになります。
| 確認する内容 | 通常の産業廃棄物 | 特別管理産業廃棄物 |
|---|---|---|
| B2票(運搬終了) | 90日 | 60日 |
| D票(処分終了) | 90日 | 60日 |
| E票(最終処分終了) | 180日 | 180日 |
「90日あるから89日目まで待てばよい」ではない
ここは重要です。
90日・60日・180日というのは、
「その日まで放置してよい期間」ではありません。
例えば、通常は処分後すぐにD票が戻ってくる取引で、1か月以上経過しているのに返送されないのであれば、90日目まで待つ必要はありません。
処理状況に不自然な点があれば、早い段階で確認すべきです。
実務上は、
「いつもならそろそろ戻ってくるはずなのに来ない」
という時点で確認する運用にしておく方が安全です。
期限を過ぎた場合は「措置内容等報告書」が必要
ここが特に重要です。
B2票・D票が、
- 通常の産業廃棄物なら90日
- 特別管理産業廃棄物なら60日
以内に返送されない場合、またはE票が180日以内に返送されない場合には、排出事業者は処理状況を把握し、生活環境保全上の支障の除去または発生防止のために必要な措置を講じる必要があります。
さらに、
その期限が経過した日から30日以内に、行政庁へ措置内容等報告書を提出する必要があります。
宮城県の場合、排出事業場が宮城県内(仙台市を除く)であれば宮城県、仙台市内であれば仙台市が窓口となります。
措置内容等報告書とは?
措置内容等報告書は、
「マニフェストが返ってこなかったので報告します」
だけの書類ではありません。
排出事業者が、
- どのマニフェストについて問題が生じたのか
- 処理業者へどのような確認をしたのか
- 実際の処理状況はどうだったのか
- 生活環境保全上の支障が生じていないか
- どのような措置を講じたのか
などを行政庁へ報告するものです。
つまり、
マニフェストの期限管理は、単なる社内事務ではなく法令上の管理業務
だということです。
「マニフェストが返ってこない」以外にも報告が必要になる場合がある
措置内容等報告書が必要になるのは、返送期限を超えた場合だけではありません。
例えば、
- 法定事項が記載されていないマニフェストの写しを受け取った
- 虚偽の記載があることが分かった
- 処理業者から適正処理が困難になった旨の通知を受けた
場合などにも、一定の要件のもとで処理状況の確認や措置内容等報告が必要になります。
特に、
「処分場が操業停止になった」
「処理施設が故障した」
「行政処分を受けて処理できなくなった」
などの連絡を受けた場合には、単なるマニフェストの返送遅れとは考えず、速やかに処理状況を確認する必要があります。
不適正処理が疑われる場合はどうする?
処理業者へ問い合わせたところ、
「どこにあるか分からない」
「別の業者へ渡した」
「まだ敷地内に置いてある」
「処分場に持っていっていない」
など、不自然な回答が返ってくることも考えられます。
そのような場合には、
単にマニフェストの返送を求めるだけでは不十分です。
まず、
- 廃棄物が現在どこにあるのか
- 誰が保管しているのか
- 契約した処理ルートと一致しているか
- 無断で別の処理業者へ渡されていないか
- 不適正保管や不法投棄のおそれがないか
を確認する必要があります。
状況によっては、以後の搬出を一旦止め、管轄する都道府県・政令市へ相談することも検討します。
産業廃棄物を処理業者へ委託した後も、排出事業者には適正処理を確保する責任があります。
排出事業者責任については、排出事業者とは?産業廃棄物処理における責任を解説でも詳しく解説しています。
契約していない業者が処理していた場合にも注意
マニフェストを確認したところ、
「委託契約書に記載されていない会社が運搬している」
「契約した処分場とは違う施設へ運ばれている」
ということが分かる場合もあります。
この場合は、
- 再委託ではないか
- 委託契約に問題はないか
- 実際の運搬業者・処分業者が必要な許可を持っているか
まで確認する必要があります。
産業廃棄物の処理委託では、委託契約書・許可証・マニフェスト・実際の処理ルートが一致していることが重要です。
委託契約書については、産業廃棄物処理委託契約書とは|法定記載事項・二者契約・保存期間を解説をご覧ください。
処理業者の許可証の確認方法については、産廃業者の許可証はどこを見る?許可品目・期限・積替え保管の確認方法で詳しく解説しています。
また、受託した処理を別の処理業者へ委託する「再委託」は原則として禁止されています。再委託の例外や書面承諾については、産業廃棄物の再委託はできる?原則禁止の理由・例外・承諾書を解説をご覧ください。
電子マニフェストの場合はどうなる?
電子マニフェスト(JWNET)では、紙のB2票・D票・E票が郵送で返ってくるわけではありません。
収集運搬業者や処分業者がJWNETへ終了報告を行い、排出事業者がシステム上で確認します。
しかし、
電子マニフェストなら期限管理をしなくてもよい
というわけではありません。
電子マニフェストでも、
- 運搬終了報告
- 処分終了報告
については、登録日から通常90日、特別管理産業廃棄物は60日、
- 最終処分終了報告
については180日が確認期限となります。
期限を過ぎても終了報告が行われない場合には、排出事業者は処理状況を確認し、必要な措置を講じる必要があります。
電子マニフェストの仕組みやJWNETの運用については、電子マニフェストとは?JWNETの導入・料金・使い方を実務解説で詳しく解説しています。
マニフェストの「返送管理表」を作っておくと便利
紙マニフェストを大量に使用している事業者では、
「返ってきていないこと自体に気付かなかった」
ということが最も危険です。
そのため、Excelなどで管理表を作成しておく方法があります。
例えば、
| 交付番号 | 交付日 | 廃棄物 | 収運業者 | 処分業者 | B2 | D | E |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 001 | 4/1 | 廃プラ | A社 | B社 | ✓ | ✓ | 未 |
| 002 | 4/3 | 木くず | C社 | D社 | ✓ | 未 | 未 |
といった形です。
さらに、
- 60日
- 90日
- 180日
が近づいたら分かるようにしておけば、期限超過の見落としを防ぎやすくなります。
毎月1回まとめて確認する方法も
マニフェストの交付枚数がそれほど多くない事業者であれば、
毎月○日に未返送マニフェストを確認する
という社内ルールを決めるだけでも管理しやすくなります。
例えば、
- A票ファイルを確認する
- B2・D・E票と照合する
- 未返送票を一覧化する
- 処理業者へ問い合わせる
- 問い合わせ記録を残す
という流れです。
「担当者が覚えている」という状態ではなく、仕組みとして確認できるようにしておくことが重要です。
返送されたマニフェストは5年間保存する
返送されたからといって、確認後すぐ処分してよいわけではありません。
紙マニフェストについては、排出事業者が保存すべき各票を5年間保存する必要があります。
返送確認と保存をセットで運用しましょう。
また、紙マニフェストを交付した排出事業者は、原則として毎年6月30日までに、前年度の交付状況について自治体へ「産業廃棄物管理票交付等状況報告書」を提出する必要があります。
電子マニフェスト利用分については、JWNET側から情報が報告されるため、排出事業者が同じ内容を別途「産業廃棄物管理票交付等状況報告書」として提出する必要はありません。
マニフェストが返ってこないときのチェックリスト
マニフェストの返送が遅れていることに気付いたら、次の順番で確認してみましょう。
まず確認すること
□ どのマニフェストか特定した
□ 交付番号を確認した
□ B2・D・Eのどの票が未返送か確認した
□ A票の内容を確認した
処理業者へ確認すること
□ 運搬は終了しているか
□ 処分場へ搬入されているか
□ 処分は終了しているか
□ 最終処分は終了しているか
□ 返送忘れではないか
□ 処理上のトラブルが発生していないか
期限管理
□ 通常産廃のB2・Dは90日以内か
□ 特別管理産業廃棄物のB2・Dは60日以内か
□ E票は180日以内か
□ 期限を超えた場合の報告期限を確認した
問題があった場合
□ 現在の廃棄物の所在を確認した
□ 不適正処理のおそれがないか確認した
□ 必要な措置を講じた
□ 管轄行政庁への相談・報告を検討した
□ 措置内容等報告書の提出漏れがないか確認した
まとめ|「返送を催促する」だけではなく処理状況を確認する
マニフェストが返ってこない場合に、排出事業者が最も重要なのは、
「紙が返ってきたか」ではなく、「委託した産業廃棄物が適正に処理されたか」
を確認することです。
紙マニフェストの場合、
・B2票=運搬終了
・D票=処分終了
・E票=最終処分終了
を確認します。
そして、
・通常の産業廃棄物のB2・D票は90日
・特別管理産業廃棄物のB2・D票は60日
・E票は180日
という確認期限があります。
期限を過ぎても返送されない場合には、速やかに処理状況を把握し、必要な措置を講じたうえで、原則として期限経過後30日以内に措置内容等報告書を提出する必要があります。
大切なのは、
「業者に任せたから大丈夫」
ではなく、
排出事業者自身が処理終了まで確認すること
です。
産廃のことなら、あさぎ行政書士事務所にご相談ください
あさぎ行政書士事務所では、産業廃棄物処理業の許可申請だけでなく、
- 紙マニフェストの運用・管理方法の見直し
- 電子マニフェスト(JWNET)の導入・運用支援
- マニフェスト管理台帳の整備
- 委託契約書とマニフェストの整合確認
- 許可証・委託先の確認
- 産廃実務に関する社内ルールの整備
など、排出事業者・処理業者双方の産廃実務に関するご相談にも対応しています。
「返ってこないマニフェストがあるが、どう対応すればよいか分からない」
「90日を過ぎていることに後から気付いた」
「紙マニフェストの管理方法を見直したい」
「電子マニフェストへ切り替えたい」
といった場合も、お気軽にご相談ください。
当事務所のマニフェスト関連サポートについては、あさぎ行政書士事務所の取扱業務をご覧ください。

無料相談窓口
初回のご相談は無料です。お気軽にお問い合わせください。
「相談だけでもOK」「正式依頼前でもOK」


