産業廃棄物の一時保管と積替え保管の違い|許可が必要になるケースとは

産業廃棄物を扱う現場では、
「回収した廃棄物を自社の置場に一晩置いてもよい?」
「排出事業者が自社の敷地で保管するのも積替え保管?」
「トラックから廃棄物を降ろしたら積替え保管になる?」
といった疑問がよくあります。
ここで混同されやすいのが、**「一時保管」と「積替え保管」**です。
結論からいうと、「一時保管」という言葉だけで許可の要否が決まるわけではありません。
重要なのは、
・誰が保管するのか
・誰が排出した廃棄物なのか
・どこで保管するのか
・収集運搬の途中なのか
・その後どこへ運ぶのか
という点です。
例えば、排出事業者が自社の工場で、自社から発生した産業廃棄物を回収日まで保管することと、収集運搬業者が顧客から回収した産業廃棄物を自社ヤードへ持ち帰って保管することでは、法的な意味が大きく異なります。
後者は、原則として積替え保管を含む産業廃棄物収集運搬業許可が問題になります。
この記事では、産廃業界での実務経験を持つ行政書士が、
- 一時保管と積替え保管の違い
- 排出事業場内での保管
- 自社の別敷地で保管する場合
- 収集運搬業者が自社ヤードへ持ち帰る場合
- 積替え保管に必要となる許可
- 保管量や施設に関する基準
- 許可なしで行うと問題になるケース
について実務に沿って解説します。
「一時保管」は法律上の許可区分ではない
まず押さえておきたいのが、
「一時保管」という名称の産業廃棄物処理業許可があるわけではない
ということです。
実務では、
「産廃を一時保管しています」
という言い方をよくしますが、「一時保管」という言葉だけでは法的な位置付けを判断できません。
例えば、
- 排出事業者が排出事業場内で保管する
- 排出事業者が事業場外の自社置場で保管する
- 収集運搬業者が運搬途中で保管する
- 処分業者が処理前後の廃棄物を保管する
では、それぞれ適用されるルールが異なります。
したがって、
「短期間だから一時保管なので許可はいらない」
という考え方は危険です。
1日だけでも、行為の内容によっては積替え保管に該当する可能性があります。
積替え保管とは?
積替え保管とは、産業廃棄物を収集運搬する途中で、いったん廃棄物を降ろし、
- 別の車両へ積み替える
- 一定期間保管する
- 大型車両へまとめて積み替える
などを行うことです。
典型的なのは、
排出事業場
↓
小型収集車で回収
↓
収集運搬業者の積替え保管施設
↓
大型車へ積替え
↓
処分場
という流れです。
複数の排出事業者から少量ずつ回収した廃棄物を一か所に集め、大型車両でまとめて処分場へ運べば、運搬効率を高めることができます。
このような運用を行う場合に問題となるのが、「積替え又は保管を含む」収集運搬業許可です。
排出事業場内で自社の廃棄物を保管する場合
最も一般的なのが、
排出事業者が、自社から発生した産業廃棄物を回収されるまで自社の事業場内で保管する
ケースです。
例えば工場で、
- 廃プラスチック類
- 金属くず
- 廃油
などを専用の保管場所へ置き、一定量になったら処理業者へ引き渡す場合です。
これは通常、収集運搬業者による「積替え保管」ではありません。
排出事業者が自ら排出した産業廃棄物を、運搬されるまで排出事業場で保管している状態だからです。
そのため、この保管自体について産業廃棄物収集運搬業許可を取得するものではありません。
ただし、
許可が不要=自由に置いてよい
という意味ではありません。
排出事業場での保管にも「保管基準」がある
排出事業者が自社の産業廃棄物を保管するときも、廃棄物処理法上の保管基準を守る必要があります。
代表的なものとして、
- 保管場所の周囲に必要な囲いを設ける
- 見やすい場所に掲示板を設置する
- 産業廃棄物が飛散・流出しないようにする
- 汚水が生じる場合は地下浸透を防止する
- 悪臭が発生しないようにする
- ねずみ、蚊、はえなどを発生させない
- 屋外で容器を用いず保管する場合は積み上げ高さを守る
などがあります。
したがって、
「自社の敷地だから、空いている場所に廃棄物を山積みにしてよい」
というものではありません。
排出事業場から離れた「自社置場」へ持っていく場合は?
少し複雑になるのが、
排出事業者が自ら排出した産業廃棄物を、排出場所とは別の自社置場へ運んで保管する
ケースです。
例えば建設業者が、
工事現場
↓
自社トラック
↓
自社資材置場で保管
↓
処分場
という運用を行う場合です。
排出事業者が自らの産業廃棄物を自ら運搬するのであれば、通常、他人の廃棄物を業として運搬するための産業廃棄物収集運搬業許可が必要になるわけではありません。
しかし、工事現場から別の場所へ廃棄物を運び、その場所で保管する行為は、運搬に伴う保管として扱われます。
そのため、積替えのための保管に関する基準などを踏まえた管理が必要になります。
「自社所有の土地だから、好きなだけ置いてよい」というものではありません。
建設廃棄物を事業場外で300㎡以上保管する場合は届出にも注意
建設工事から発生した産業廃棄物については、さらに注意が必要です。
排出事業者が、建設工事に伴って発生した産業廃棄物を排出事業場の外で自ら保管する場合で、その保管場所の面積が300㎡以上であるときは、原則として事前に都道府県知事等への届出が必要です。
例えば、
解体現場
↓
元請業者が自ら運搬
↓
300㎡以上の自社ストックヤードで保管
というケースです。
一方、解体工事によって発生した廃棄物を、その解体現場内で保管しているだけであれば、この「事業場外保管」の届出制度の対象とはなりません。
ただし、保管基準そのものは守る必要があります。
収集運搬業者が回収した廃棄物を自社ヤードへ持ち帰る場合
ここが最も注意したいケースです。
例えば収集運搬業者が、
排出事業者A社
↓
収集運搬業者が回収
↓
収集運搬業者の自社ヤード
↓
翌日、処分場へ搬出
という運用を行う場合です。
業者側では、
「一晩だけ置いている」
「翌朝すぐ処分場へ持っていく」
「積み替えず、ただ一時的に置いているだけ」
と考えているかもしれません。
しかし、収集運搬業者が他人から収集した産業廃棄物を、運搬途中でいったん自社施設に降ろして保管するのであれば、積替え保管に該当することが問題になります。
この場合、
「積替え又は保管を含む産業廃棄物収集運搬業許可」
を取得しているか確認する必要があります。
「積替え保管なし」の許可では、自社ヤードに降ろせない
産業廃棄物収集運搬業許可には、
「積替え又は保管を除く」
ものと、
「積替え又は保管を含む」
ものがあります。
一般的な収集運搬業者の許可証では、
「積替え保管を除く」
となっているケースが多くあります。
この許可しか持っていない業者が、顧客から収集した産業廃棄物を、
「今日は処分場へ行けないから」
という理由で自社ヤードへ降ろし、一晩保管することはできません。
保管時間の長短ではなく、収集運搬の途中で廃棄物を降ろして保管する行為かどうかが重要です。
処理業者の許可証で積替え保管を確認する方法については、産廃業者の許可証はどこを見る?許可品目・期限・積替え保管の確認方法で詳しく解説しています。
車両に積んだままなら必ず積替え保管ではない?
ここも実務上よく質問されるところです。
例えば、
「処分場の受付時間に間に合わなかったので、廃棄物を積んだトラックを会社に停め、翌朝そのまま処分場へ向かう」
というケースです。
単に運搬途中で休憩・駐車をしたからといって、直ちにすべてが「積替え保管」に該当するという単純なものではありません。
一方で、
- 車両を長期間留置する
- 荷台やコンテナを実質的な保管場所として利用する
- コンテナを車両から降ろして置いておく
- 日常的に車両上で廃棄物を保管する
といった運用になると、単なる運搬途中の駐車といえるか慎重な判断が必要になります。
「車に積んだままなら何日置いても積替え保管ではない」
というルールがあるわけではありません。
実際の運用が保管に当たるか判断に迷う場合には、管轄行政庁へ事前に確認することをおすすめします。
積替え保管の目的は「運搬効率の向上」
積替え保管の本来の目的は、収集運搬を効率化することです。
例えば、
2t車で複数の事業所から回収
↓
積替え保管施設へ集約
↓
10t車へ積替え
↓
遠方の処分場へ運搬
という運用です。
このようにすれば、少量の廃棄物を小型車で何度も遠方へ運ぶ必要がなくなります。
一方、
- 破砕する
- 圧縮する
- 選別する
- 性状を変化させる
といった行為は、単なる積替え保管ではなく、中間処理に該当する可能性があります。
積替え保管場所で勝手に「選別」してもよい?
積替え保管施設へ廃棄物を持ち込み、
「金属だけ抜き取れば売れる」
「プラスチックと木くずを分けてから処分場へ持っていこう」
と考えることもあります。
しかし、積替え保管はあくまで収集運搬の一環です。
廃棄物を、
- 破砕
- 圧縮
- 選別
するなど、廃棄物の形態・性状を変える行為は、処分業許可が必要となる可能性があります。
積替え保管許可があるからといって、その場所で自由に中間処理まで行えるわけではありません。
積替え保管を行うための主な基準
積替え保管を行う場合には、単に収集運搬業の許可証へ「積替え保管あり」と記載されればよいわけではありません。
施設と運用について一定の基準を守る必要があります。
あらかじめ運搬先が決まっていること
積替え後の産業廃棄物を、
最終的にどこへ運ぶのか
があらかじめ決まっている必要があります。
「とりあえず集めて、処分先は後から探す」
という保管場所ではありません。
適切に保管できる量を超えないこと
積替え場所へ無制限に産業廃棄物を搬入することはできません。
施設の構造や保管能力に応じた適正な数量で管理する必要があります。
保管量には上限がある
収集運搬に伴う産業廃棄物の保管については、原則として、
その保管場所における1日当たりの平均的な搬出量 × 7日分
を超えないこととされています。
例えば平均的な搬出量が1日10㎥であれば、原則として保管上限は70㎥という考え方です。
囲い・掲示板などが必要
積替え保管場所では、
- 囲い
- 掲示板
- 飛散・流出防止設備
- 汚水対策
- 必要に応じた仕切り
などを設け、保管基準を守る必要があります。
積替え保管できる「品目」にも注意
積替え保管を含む許可を持っている業者でも、
収集運搬できるすべての産業廃棄物を積替え保管できるとは限りません。
例えば、
- 廃プラスチック類 積替え保管可
- 金属くず 積替え保管可
- 木くず 収集運搬のみ
という許可内容になることもあります。
宮城県の産業廃棄物処理業者名簿では、収集運搬できる種類を「○」、積替え又は保管ができる種類を「◎」として区別しています。
したがって排出事業者が処理を委託するときには、
「積替え保管ありの業者だから何でも置ける」
ではなく、今回委託する廃棄物について積替え保管まで許可されているか確認しましょう。
積替え保管を新たに始める場合は「変更届」だけでは足りない
すでに、
「積替え又は保管を除く」
産業廃棄物収集運搬業許可を持っている事業者が、
「今度、自社ヤードを作って積替え保管を始めたい」
という場合があります。
この場合、宮城県では事業範囲変更許可申請が必要です。
単に、
「保管場所を追加しました」
という変更届だけで積替え保管を始めることはできません。
また、宮城県は積替え保管施設の設置にあたり事前の手続が必要になるため、まず県または所管窓口へ相談するよう案内しています。
積替え保管を計画する場合には、
- 土地を購入する
- 賃貸借契約を締結する
- 建物を建設する
といったことを先に進めず、まず行政庁へ事前相談することをおすすめします。
実際に積替え保管施設を設けて収集運搬業を行う場合の、施設要件・事前相談・申請手続については、積替え保管ありの産業廃棄物収集運搬業許可で詳しく解説しています。
土地があれば積替え保管施設にできるとは限らない
積替え保管施設を設ける場合には、
「広い土地を持っている」
というだけでは不十分です。
実際には、
- 土地の使用権限
- 都市計画・用途地域
- 周辺の土地利用
- 施設の構造
- 搬入・搬出方法
- 廃棄物の種類
- 保管量
- 飛散・流出対策
- 排水対策
- 周辺環境への影響
- 自治体独自の条例・指導要綱
など、多くの項目を確認する必要があります。
積替え保管ありの収集運搬業許可は、一般的な「積替え保管なし」の収集運搬業許可よりも、施設面・環境面の検討事項が大幅に増えます。
委託契約書にも積替え保管の内容を記載する
排出事業者が、積替え保管を行う収集運搬業者へ処理を委託する場合には、委託契約書にも注意が必要です。
収集運搬委託契約書には、積替え保管を行う場合、
- 積替え保管場所の所在地
- 積替え保管できる産業廃棄物の種類
- 保管上限
など、法令で定められた事項を反映する必要があります。
つまり排出事業者側でも、
「回収後に直接処分場へ行くのか、それとも途中で積替え保管施設を経由するのか」
を把握しておく必要があります。
委託契約書については、産業廃棄物処理委託契約書|法定記載事項・二者契約を解説で詳しく解説しています。
排出事業者も「運搬ルート」を確認する
排出事業者から見ると、
「許可業者に回収してもらったから、後は業者に任せればよい」
と思いがちです。
しかし、
どこへ運ばれ、どこで積替え保管され、最終的にどの処分場へ運ばれるのか
を確認することも重要です。
例えば、
契約書:排出事業場→処分場へ直行
実際:収集運搬業者の無許可ヤードで一晩保管→処分場
となっていれば問題です。
排出事業者が処理業者を選ぶ際の確認事項については、許可証・処分先・委託契約・マニフェストなどを一体として確認するとよいでしょう。
「一時保管」と「積替え保管」をケース別に整理
実務上よくあるケースを整理すると、次のようになります。
| ケース | 基本的な考え方 |
|---|---|
| 排出事業者が排出事業場内で自社廃棄物を保管 | 積替え保管業許可ではない。ただし保管基準を守る |
| 建設現場内で元請が建設廃棄物を保管 | 原則として事業場内保管。保管基準を守る |
| 排出事業者が自ら別の自社置場へ運んで保管 | 運搬に伴う保管として基準に注意。建設廃棄物300㎡以上の事業場外保管は届出にも注意 |
| 収集運搬業者が顧客の廃棄物を自社ヤードへ降ろす | 原則として積替え保管を含む許可が必要 |
| 積替え保管なし業者が回収品を自社ヤードに一晩置く | 原則不可 |
| 積替え保管場所で破砕・圧縮等を行う | 中間処理業許可が問題になる |
| 処分業者が処理前の廃棄物を施設内で保管 | 処分に伴う保管として別の基準が適用 |
重要なのは、
「一時的かどうか」ではなく、「誰が・どこで・何のために保管しているのか」
です。
こんな運用は一度確認した方がよい
次のような運用をしている場合には、許可内容や保管方法を一度確認することをおすすめします。
「処分場が閉まったら会社へ持ち帰っている」
積替え保管なしの収集運搬業者であれば問題になる可能性があります。
「回収したコンテナを自社ヤードへ置いている」
コンテナ内の廃棄物が他社から委託された産業廃棄物であれば、積替え保管に該当しないか確認が必要です。
「建設現場の廃材を自社資材置場へ集めている」
排出事業者自身の廃棄物であっても、事業場外保管として保管基準や届出の確認が必要になる場合があります。
「置場で金属と木くずを分けている」
単なる積替え保管ではなく、選別という中間処理に該当しないか確認が必要です。
「短期間だから大丈夫だと思っている」
保管時間が短いという理由だけで許可不要になるものではありません。
積替え保管を始める前のチェックリスト
現在の許可
□ 現在の許可証が「積替え又は保管を除く」になっていないか
□ 積替え保管したい産業廃棄物の品目を確認した
□ 許可期限を確認した
保管場所
□ 土地・建物の使用権限がある
□ 土地利用規制を確認した
□ 周辺環境を確認した
□ 囲い・掲示板を設置できる
□ 飛散・流出防止措置を講じられる
□ 汚水対策ができる
運用
□ 積替え後の運搬先が決まっている
□ 保管上限を管理できる
□ 搬入・搬出記録を管理できる
□ 積替え保管と中間処理を区別している
許可・契約
□ 行政庁へ事前相談した
□ 必要な事業範囲変更許可を確認した
□ 委託契約書へ積替え保管場所等を反映できる
□ マニフェスト・実際の運搬ルートが一致している
まとめ|「一時だから許可不要」と考えない
産業廃棄物の一時保管と積替え保管を考えるときに最も重要なのは、
保管期間の長さだけで判断しないこと
です。
排出事業者が、自ら排出した産業廃棄物を排出事業場内で回収まで保管する行為は、通常、収集運搬業者の積替え保管とは異なります。
一方、収集運搬業者が、
顧客から回収した産業廃棄物を運搬途中で自社ヤードへ降ろして保管する
のであれば、原則として積替え保管を含む収集運搬業許可が必要になります。
整理すると、
・排出事業場内の自社廃棄物保管 → 保管基準を確認
・事業場外で自社廃棄物を保管 → 運搬に伴う保管・届出等を確認
・収集運搬業者が他社の廃棄物を途中保管 → 積替え保管許可を確認
・保管場所で破砕・圧縮・選別 → 中間処理業許可も検討
という違いがあります。
特に注意したいのは、
「一晩だけ」
「自社の土地だから」
「一時的に置くだけ」
という理由では、積替え保管の問題を回避できないことです。
現在の運用が積替え保管に該当するか判断に迷う場合には、実際の廃棄物の流れを図にして整理し、管轄行政庁へ事前に確認することをおすすめします。
産廃のことなら、あさぎ行政書士事務所にご相談ください
あさぎ行政書士事務所では、産業廃棄物収集運搬業許可だけでなく、
- 積替え保管を含む収集運搬業許可の検討
- 積替え保管施設の事前相談
- 事業範囲変更許可申請
- 許可証・委託契約書の確認
- 許可取得後の産廃実務・維持管理
についても対応しています。
「現在の置場での保管が積替え保管になるのか分からない」
「積替え保管なしの許可で現在の運用を続けてよいか確認したい」
「新しく積替え保管ヤードを設けたい」
といった場合も、お気軽にご相談ください。
当事務所の産業廃棄物収集運搬業サポートについては、産業廃棄物収集運搬業許可|宮城・東北の申請サポートをご覧ください。

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