石膏ボードは何の産業廃棄物?収集運搬・処分するときの注意点

建築工事や解体工事では、壁や天井から大量の石膏ボードが発生することがあります。
現場では、
「石膏ボードは“がれき類”でいいの?」
「コンクリートと一緒に運んでも大丈夫?」
「安定型処分場へ持っていける?」
と迷うことも少なくありません。
結論からいうと、廃石膏ボードは一般に、産業廃棄物の「ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず」として取り扱われます。
しかし、コンクリートがらなどの「がれき類」と同じ感覚で処理することはできません。
特に重要なのが、廃石膏ボードは安定型最終処分場へ埋立処分できないという点です。
さらに、古い建築物を解体・改修する場合には、石綿(アスベスト)を含む石膏ボードにも注意する必要があります。
この記事では、産廃業界での実務経験を持つ行政書士が、
- 石膏ボードは何の産業廃棄物なのか
- がれき類との違い
- 収集運搬業者の許可品目の確認方法
- 安定型最終処分場へ搬入できない理由
- リサイクルするときの注意点
- 石綿を含む石膏ボードの取扱い
について、実務に沿って解説します。
廃石膏ボードは何の産業廃棄物?
建設工事や解体工事から発生した廃石膏ボードは、一般に、
「ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず」
に分類される産業廃棄物として取り扱われます。
許可証などでは、略して「ガラスくず等」「ガラ陶」などと呼ばれることもあります。
石膏ボードだからといって、
「がれき類」ではありません。
ここは実務上、間違えやすいポイントです。
「コンクリート」という言葉が入っていても「がれき類」とは別
産業廃棄物には、
- がれき類
- ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず
という別々の種類があります。
例えば、工作物の新築・改築・除去に伴って発生するコンクリート片などは、通常「がれき類」に該当します。
一方、廃石膏ボードについては一般に「ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず」として扱われます。
そのため、
「解体工事から出たものだから全部がれき類」
と判断しないよう注意が必要です。
石膏ボードの構造を知ると分かりやすい
一般的な石膏ボードは、石膏を芯材として、その両面を原紙で覆った建築材料です。
住宅、事務所、店舗などの、
- 壁
- 天井
- 間仕切り
などに広く使用されています。
解体・改修工事によって不要になると「廃石膏ボード」となります。
石膏そのものだけでなく表面に紙が付いているため、処分時には石膏と紙の両方の性質を考える必要があります。
廃石膏ボードは安定型最終処分場には入れられない
廃石膏ボードについて最も重要な注意点の一つが、
安定型最終処分場へ埋立処分できない
ことです。
安定型最終処分場では、一定の安定型産業廃棄物だけを埋め立てることができます。
代表的なものとして、
- 廃プラスチック類
- ゴムくず
- 金属くず
- ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず
- がれき類
があります。
これを見ると、
「石膏ボードも『ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず』なら安定型に入れられるのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、廃石膏ボードは明確に安定型産業廃棄物から除外されています。
つまり、
「ガラ陶の許可品目だから安定型処分場へ持っていける」
とは限らないのです。
なぜ石膏ボードを安定型処分場に埋められない?
その理由の一つが、硫化水素の発生リスクです。
石膏の主成分は硫酸カルシウムです。
廃石膏ボードが有機物などとともに埋め立てられ、酸素の少ない環境になると、微生物の働きなどによって有害な硫化水素が発生するおそれがあります。
硫化水素は、いわゆる腐った卵のような臭いを持つ気体ですが、高濃度になると人体に重大な影響を与える危険があります。
このため、廃石膏ボードについては安定型最終処分場への埋立処分が認められていません。
表面の紙を取れば安定型に入れられる?
これも注意したいところです。
かつては、廃石膏ボードから付着している紙を取り除いた後の石膏について、安定型最終処分場へ埋め立てる取扱いがありました。
しかし、その後の知見により、紙を除去した石膏でも硫化水素が発生するおそれがあることが分かりました。
現在では、紙を取り除いた廃石膏についても、単純に安定型最終処分場へ埋め立てることはできません。
「紙を剥がせば安定型」という古い認識で処理しないよう注意が必要です。
廃石膏ボードはどう処理する?
現在では、廃石膏ボードについて、できるだけ中間処理・再資源化を行う方法が広がっています。
例えば中間処理施設で、
- 廃石膏ボードを受け入れる
- 破砕する
- 石膏と紙を分離する
- 異物を除去する
- 石膏粉を再資源化する
といった処理が行われます。
回収された石膏については、条件に応じて、
- 石膏ボード原料
- セメント原料
- 土壌改良材など
へ再利用される場合があります。
ただし、すべての廃石膏ボードを同じ方法でリサイクルできるわけではありません。
新築系と解体系では状態が大きく違う
廃石膏ボードは、発生状況によって品質が大きく異なります。
新築工事から出る石膏ボード
新築工事では、石膏ボードを施工するときの端材などが発生します。
比較的、
- 汚れが少ない
- 異物が少ない
- 材質を確認しやすい
ため、リサイクルしやすい傾向があります。
解体・改修工事から出る石膏ボード
一方、既存建築物の解体・改修工事から発生する石膏ボードには、
- クロス
- 接着剤
- 木材
- 金属
- 断熱材
- モルタル
- その他の建設廃棄物
などが付着・混入していることがあります。
また、古い建物ではアスベストなどの有害物質について確認が必要な場合があります。
そのため、解体系の廃石膏ボードは、新築系よりも慎重な分別・確認が必要です。
収集運搬するときは許可品目を確認する
廃石膏ボードを産業廃棄物収集運搬業者へ委託するときには、
「ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず」
を取り扱うことのできる許可を持っているか確認します。
ただし、許可証では品目名を見るだけでは十分ではありません。
許可内容によっては、
「廃石膏ボードを除く」
などの限定が付されている場合があります。
したがって、
「ガラスくず等に○が付いているから大丈夫」
と即断せず、許可証の記載を最後まで確認しましょう。
処理業者の許可証について、どこを見ればよいのかは、産廃業者の許可証はどこを見る?許可品目・期限・積替え保管の確認方法で詳しく解説しています。
処分業者の許可内容も確認する
収集運搬業者だけでなく、廃石膏ボードを受け入れる処分業者の許可も確認する必要があります。
例えば処分業者が、
「ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず」
の処分業許可を持っていたとしても、実際に廃石膏ボードを受け入れて処理できるとは限りません。
確認したいのは、
- 廃石膏ボードを許可品目として取り扱えるか
- どのような処分方法が許可されているか
- 実際の施設で廃石膏ボードを受け入れているか
です。
特に処分業許可では、品目だけでなく処分方法と施設をセットで確認することが大切です。
産業廃棄物処分業の基本については、産業廃棄物処分業許可もご覧ください。
コンクリートがらなどと混ぜて運んでもよい?
解体現場では、
「石膏ボードもコンクリートがらも同じ建設廃棄物だから、一緒のコンテナへ入れてしまおう」
となりがちです。
しかし、できるだけ発生段階で分別することが重要です。
石膏ボードを、
- がれき類
- 木くず
- 廃プラスチック類
- 金属くず
などと混ぜれば、建設混合廃棄物となり、選別などの中間処理が必要になる可能性があります。
また、廃石膏ボードが安定型産業廃棄物に混入すると、その混合物をそのまま安定型最終処分場へ持ち込むことができなくなる場合があります。
したがって現場では、
「石膏ボードは石膏ボードとして分ける」
ことを基本にした方が、適正処理・リサイクルの両面から望ましいといえます。
建設混合廃棄物に石膏ボードが入っていたら?
例えば、
- 廃プラスチック類
- 木くず
- 金属くず
- がれき類
- 廃石膏ボード
が一つのコンテナに入っている場合を考えてみましょう。
この場合、
「建設混合廃棄物だから何でもよい」
わけではありません。
混合しているそれぞれの廃棄物について、
- 収集運搬業者が必要な許可を持っているか
- 処分業者が必要な許可を持っているか
- その処理施設で受入可能か
を確認する必要があります。
可能であれば、石膏ボードを他の廃棄物と混ぜる前に分別しておくことをおすすめします。
古い石膏ボードではアスベストにも注意
解体・改修工事では、もう一つ重要な注意点があります。
一部の古い石膏ボードには石綿(アスベスト)が使用されていた製品があります。
国土交通省の資料では、1970年から1986年に製造された一部の特殊な石膏ボード製品について、石綿を含むものが存在することが示されています。
ただし、
「1986年以前の石膏ボードはすべてアスベスト入り」
という意味ではありません。
あくまで一部の製品です。
設計図書、製品名、メーカー、認定番号などから確認できる場合がありますが、判断できない場合には必要に応じて分析を行います。
見た目だけで判断しない
石膏ボードの表面を見ただけで、
「これはアスベスト入り」
「これはアスベストなし」
と確実に判断することは困難です。
古い建築物を解体・改修する場合には、法令に基づく石綿事前調査を適切に行い、その結果を踏まえて作業・廃棄物処理を行う必要があります。
石綿含有石膏ボードだった場合は通常の石膏ボードと分ける
石綿を一定量以上含む石膏ボードが確認された場合には、通常の廃石膏ボードと同じように扱うことはできません。
成形板である石膏ボードの場合には、通常、石綿含有産業廃棄物として適切に取り扱う必要があります。
この場合、
- 他の廃棄物と混合しない
- 飛散させない
- 必要な許可を持つ処理業者へ委託する
- 適切な方法で運搬・処分する
といった対応が必要になります。
「石膏ボードだからいつものリサイクル施設へ」
と考えるのではなく、石綿含有の有無を先に確認することが重要です。
廃石膏ボードの委託契約書には何を書く?
廃石膏ボードを処理業者へ委託する場合には、他の産業廃棄物と同様に、適切な産業廃棄物処理委託契約書を締結します。
その際には、
- 産業廃棄物の種類
- 数量
- 運搬先
- 処分方法
- 処分場所
- 委託料金
- その他必要な事項
を確認します。
重要なのは、
契約書・処理業者の許可証・実際に排出する廃棄物が一致していること
です。
例えば、許可証では廃石膏ボードが除外されているにもかかわらず、委託契約書で廃石膏ボードを委託対象としていてはいけません。
委託契約書の基本については、産業廃棄物処理委託契約書とは|法定記載事項・二者契約・保存期間を解説で詳しく解説しています。
建設工事では元請業者が排出事業者になる
建設工事に伴って発生する廃石膏ボードでは、
誰が排出事業者なのか
も重要です。
建設工事に伴って発生する産業廃棄物については、原則として、発注者から工事を直接請け負った元請業者が排出事業者になります。
例えば、
発注者
↓
元請A社
↓
下請B社
という工事で、B社が実際に石膏ボードを撤去したとしても、原則として排出事業者は元請A社です。
そのため元請業者は、
- 廃石膏ボードをどのように分別するか
- 誰が運搬するのか
- どこへ搬入するのか
- 誰が処分するのか
- 処理業者の許可に問題がないか
を確認する必要があります。
建設工事の元請・下請と産業廃棄物処理の関係については、元請・下請で産廃許可はどう変わる?排出事業者責任と下請運搬の特例で詳しく解説しています。
廃石膏ボードを排出するときのチェックリスト
廃石膏ボードを処理業者へ委託するときには、次の項目を確認してみましょう。
廃棄物そのもの
□ 石膏ボードであることを確認した
□ 他の建設廃棄物とできるだけ分別した
□ 新築系・解体系を把握している
□ クロスや異物などの付着状況を確認した
□ 石綿含有の確認が必要か検討した
収集運搬業者
□ 「ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず」の許可がある
□ 廃石膏ボードが許可範囲から除外されていない
□ 必要な地域の収集運搬業許可がある
□ 許可期限が有効である
処分業者
□ 廃石膏ボードを取り扱える許可がある
□ 実際の処分方法が許可されている
□ 処理施設で廃石膏ボードを受け入れている
□ 安定型最終処分場へ搬入する計画になっていない
契約・マニフェスト
□ 委託契約書を締結している
□ 許可証と契約内容が一致している
□ マニフェストの品目を適切に記載している
□ 最終的な処理先を確認している
まとめ|石膏ボードは「がれき類」ではなく、処分方法にも注意
廃石膏ボードを処理するときには、
「建設現場から出た板状の廃材だから、がれき類だろう」
と判断しないことが重要です。
廃石膏ボードは一般に、
「ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず」
として取り扱われます。
ただし、同じ品目に分類される他の廃棄物とは異なり、廃石膏ボードは安定型最終処分場へ埋立処分することができません。
そのため、
・現場でできるだけ分別する
・収集運搬業者の許可品目を確認する
・処分業者が廃石膏ボードを処理できるか確認する
・安定型処分場へ搬入しない
・古い建物では石綿含有の可能性を確認する
・委託契約書・許可証・マニフェストを一致させる
ことが重要です。
特に解体・改修工事では、石膏ボードを他の建設廃棄物と一緒にしてしまう前に、分別と処理先を決めておくと適正処理につながります。
産廃のことなら、あさぎ行政書士事務所にご相談ください
あさぎ行政書士事務所では、産業廃棄物収集運搬業・処分業の許可申請だけでなく、
- 廃石膏ボードを含む許可品目の確認
- 収集運搬業者・処分業者の許可証確認
- 産業廃棄物処理委託契約書の確認
- マニフェスト運用の確認
- 建設・解体工事における産廃実務相談
にも対応しています。
「石膏ボードをどの品目で委託すればよいか分からない」
「現在の収集運搬業者の許可で運べるのか確認したい」
「処分先や委託契約書の内容に問題がないか確認したい」
といった場合も、お気軽にご相談ください。
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