化学物質リスクアセスメントは義務?対象物質の拡大と会社が行う対応

化学物質リスクアセスメントの現場

工場や事業所で使用している洗浄剤、塗料、溶剤などについて、リスクアセスメントが必要か確認できていますか?

対象物質の追加や管理体制の見直しにより、以前に確認した内容の再点検が必要になる場合があります。

この記事では、化学物質リスクアセスメントの義務、対象物質の拡大、管理者等の選任・講習の要件と、会社が実際に進める対応を解説します。

化学物質リスクアセスメントが義務となる場合

化学物質リスクアセスメントとは、化学物質の危険性・有害性を把握し、作業中に起こり得る事故や健康障害のリスクを見積もり、リスクを減らす方法を検討する取組です。

労働安全衛生法第57条の3は、法令で定める対象物質について、事業者に危険性・有害性等の調査を義務付けています。

対象となる物質と、実施しなければならない時期を確認することが出発点になります。

小規模な事業場や少量の使用でも確認が必要です

化学メーカーや大規模工場に限らず、対象物を取り扱う事業場は幅広く対象となります。製造業、建設業、清掃業などでも、使用する製品の成分や取扱状況に応じて確認が必要です。

従業員が50人未満であることや、薬品の使用量が少ないことだけを理由に、対象外と判断することはできません。対象物質の含有率などの要件も併せて確認します。

新しい薬品の採用や作業方法の変更などが実施の契機になります

法令では、主に次の時期にリスクアセスメントを行うこととされています。

  • 対象物を原材料等として新規に採用し、又は変更するとき
  • 対象物を製造・取り扱う作業方法や手順を新規に採用し、又は変更するとき
  • 対象物の危険性・有害性等に変化が生じ、又は生じるおそれがあるとき
  • 一方、以前から同じ方法で扱っていた物質が新たに対象へ追加され、過去に評価したことがない場合などは、指針で実施に努めるとされる場面もあります。対象への該当性と実施時期を分けて確認し、未評価の作業は計画的に点検しましょう。

対象物質は段階的に拡大しています

近年の制度見直しでは、ラベル表示・SDS交付等の対象物質の拡大と、事業場の管理体制の強化が進められています。主な動きを整理すると、次のとおりです。

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時期主な変更・確認事項
2024年4月化学物質管理者や保護具着用管理責任者の選任等に関する規定が施行
2025年4月ラベル表示・SDS交付等の対象物質を追加
2026年4月対象物質2,900に拡大

同じ製品を使い続けていても、含まれる成分が新たに対象となる場合があります。製品名だけで判断せず、SDSの成分情報と最新の対象物質一覧を照合することが大切です。

自社が対象かはSDSと最新の対象物質一覧で確認します

まず、使用している薬品・原材料・業務用製品を一覧にし、仕入先やメーカーからSDSを入手します。SDSは、化学品の危険有害性や安全な取扱方法などを伝える安全データシートです。

対象確認では、特に次の情報を確認します。

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確認する情報確認の目的
製品名と製造者現場で使っている製品とSDSが一致しているか確認する
成分名とCAS登録番号対象物質の一覧と照合する
含有率物質ごとの裾切値に該当するか確認する
適用法令と改訂日安衛法の対象記載や、情報の新しさを確認する

裾切値とは、混合物に含まれる対象物質について、規制の対象となるかを確認する含有率の基準です。古いSDSでは対象物質の追加が反映されていない場合があるため、適用法令欄だけで判断せず、成分情報と最新の一覧を併せて確認します。

また、一般消費者向け製品の除外や、製品の形状・取扱状況等による取扱いにも注意が必要です。ホームセンターで購入できる業務用洗剤だから対象外、という判断はできません。

SDSが不足している、対象物質か判断できないなど、確認の段階から支援をご希望の場合もご相談いただけます。

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化学物質管理者等の選任と講習の要件を確認します

2024年4月から、対象物を製造・取り扱う事業場等で、化学物質管理者を選任する制度が施行されています。対象物の譲渡・提供だけを行う事業場についても、表示・SDS等の管理に関する選任規定があります。

「有資格者が必要になった」と一括りにせず、事業場の区分と担当する役割に応じて確認しましょう。

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区分・役割選任・講習の考え方
化学物質管理者
(対象物を製造する事業場)
厚生労働大臣が定める講習の修了者、又は同等以上の能力を有すると認められる者から選任
化学物質管理者
(製造以外の事業場)
必要な能力を有すると認められる者から選任。化学物質管理者講習に準ずる講習の受講が望ましい
保護具着用管理責任者リスクアセスメントの結果に基づく措置として保護具を使用させる場合などに選任。保護具に関する知識・経験が必要

ここでいう製造事業場は、リスクアセスメント対象物を製造する事業場です。製造業という業種区分とは区別して確認します。

選任後は、評価、対策、教育などの実務を進められる役割分担も必要です。経営者、管理者、購買担当、現場担当の間で、薬品や工程の変更情報が共有される仕組みを整えましょう。

会社が進める対応は薬品の整理から始めます

1 使用薬品とSDSを一覧にします

製品名、使用部署、用途、仕入先、SDSの入手状況を一覧にします。日常的に使う薬品だけでなく、設備の清掃、保守点検、容器交換などで使う製品も確認すると、抜けを見つけやすくなります。

2 実際の作業条件を確認します

同じ薬品でも、密閉した設備で使う場合と、容器を開けて小分けする場合ではリスクが異なります。使用量、濃度、温度、作業時間・頻度、換気、皮膚接触など、評価に必要な情報を現場で確認します。

SDSに書かれた性質と、実際にその薬品をどう扱っているかを結び付けることが重要です。作業者の話も聞き、清掃・詰まりの除去などの非定常作業も含めて整理しましょう。

3 作業に合う方法でリスクを評価します

厚生労働省のCREATE-SIMPLEなど、リスクの見積りを支援するツールを活用できます。吸入や皮膚からの吸収による健康影響に加え、物質の危険性を見積もる機能もあります。

入力条件やツールの適用範囲を確認し、結果の根拠を説明できるようにします。化学反応や設備全体のプロセスに関わる危険性など、簡易ツールで十分に評価できない事項は、別の手法や専門的な検討が必要です。

4 対策を検討して実施します

評価結果を基に、次のような順序で対策を検討します。

  • 危険性・有害性が低い物質への変更などを検討する
  • 設備の密閉化や局所排気などで発生・ばく露を抑える
  • 作業方法、作業時間、立入りの管理などを改善する
  • 必要な保護具を適切に選び、正しく使用・管理する

有機溶剤や特定化学物質などに関する個別規則が適用される場合は、定められた措置を実施します。また、対象物へのばく露を最小限度にする義務や、濃度基準値が設定された物質について屋内作業場で基準値以下にする義務など、適用される規定も確認が必要です。

5 結果を記録して作業者へ周知します

リスクアセスメントを行ったときは、対象物の名称、業務内容、評価結果、講ずる措置の内容を記録し、対象業務に従事する労働者へ周知します。

記録は次回のリスクアセスメントまで保存し、次回が3年以内の場合は3年間保存することとされています。ほかの規定による作業記録等の保存義務とは分けて確認してください。

作業場での掲示・備付け、書面の交付、作業場で常時確認できる電子記録など、法令に沿った方法で共有します。

薬品や工程を変える前に確認できる仕組みを整えましょう

継続して管理するためには、新しい薬品の購入や工程変更を、現場だけで決めずに共有できる仕組みが役立ちます。購買担当から管理者への連絡、SDSの更新確認、評価対象の確認などを社内の手順として決めておきましょう。

衛生委員会等がある事業場では、評価や対策の進み具合、残っている課題、作業者からの意見を取り上げることも大切です。対策を決めた後は、担当者と実施時期を明らかにして、改善の状況を確認します。

対象確認から評価や社内教育までご相談いただけます

薬品の種類が多い、SDSがそろっていない、評価条件の決め方が分からないなど、社内だけでは進めにくい場面もあります。

あさぎ行政書士事務所では、産業廃棄物業界での現場・技術管理者の経験を生かし、化学物質管理に関する技術的な助言と実施支援を行います。

  • SDSと使用薬品の整理、対象物質の確認
  • 作業条件の整理とリスクアセスメントの実施支援
  • リスク低減策と改善の優先順位の検討
  • 担当者への実務説明や従業員向け勉強会
  • 安全衛生委員会等での技術的な助言と継続相談

初回は、現在の状況とご希望を伺い、必要な支援の進め方をご案内します。個別の調査・評価・研修等は、内容と費用をご確認いただいた上で実施します。

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参考資料

  1. 労働安全衛生法 第57条の3
  2. 労働安全衛生規則 第12条の5・第12条の6
  3. 労働安全衛生規則 第34条の2の7・第34条の2の8
  4. 厚生労働省 新たな化学物質規制と対象物質の最新一覧
  5. 厚生労働省 2025年・2026年施行の対象物質追加に関する通達
  6. 厚生労働省 2023年改正の化学物質リスクアセスメント指針
  7. 厚生労働省 化学物質管理者講習等に関する通達
  8. 職場のあんぜんサイト CREATE-SIMPLE
  9. 厚生労働省 化学物質対策のQ&A リスクアセスメント関係
  10. 職場のあんぜんサイト 保護具着用管理責任者