SDSを集めた後は何をする?化学物質リスクアセスメントの進め方

SDSを集めた後は何をする?化学物質リスクアセスメントの進め方

使用している薬品のSDSを集めたものの、その後のリスクアセスメントをどう進めればよいのか迷っていませんか。

SDSを集めた後は、その情報を自社の作業条件と結び付けて、リスクの見積り、対策の検討・実施、記録と周知へ進めます。薬品の危険有害性に加え、どこで、どのくらい、どのように使っているかを把握することが大切です。

この記事では、SDSを活用して化学物質リスクアセスメントを進める流れを、次の6つのステップで解説します。

  1. 薬品と作業を一覧にする
  2. SDSから危険有害性と法規制を確認する
  3. 現場で実際の作業条件を確認する
  4. 作業に合った方法でリスクを見積もる
  5. リスク低減対策を実施し、効果を確認する
  6. 結果を記録・周知し、変更時などに見直す

あさぎ行政書士事務所では、化学物質リスクアセスメントの導入~運用までサポートしています。
詳しい内容は、「化学物質リスクアセスメント導入・運用支援」をご確認ください。

1 薬品と作業を一覧にする

まず、現場で使っている薬品・原材料・業務用製品と、入手したSDSを対応させます。同じ製品でも濃度や品番が違う場合があるため、容器の表示や発注情報と照合しましょう。

一覧表には、少なくとも次の情報をまとめると、確認を進めやすくなります。

  • 製品名・品番、メーカー・仕入先
  • 使用する部署・場所と、具体的な作業内容
  • SDSの入手状況と改訂日
  • リスクアセスメントの実施状況と確認担当者

リスクアセスメントは、作業と対象物質を結び付けて行います。同じ薬品でも、使用場所や作業方法が違えば、評価する条件も変わります。

化学物質管理者を中心に、購買担当、現場担当、設備担当などで情報を持ち寄り、作業者の意見も確認しましょう。

化学物質管理者は誰がなれる?選任が必要な事業場・講習・仕事内容

2 SDSから危険有害性と法規制を確認する

SDSでは、主に次の項目を使って評価に必要な情報を整理します。

SDSの項目確認する内容
2 危険有害性の要約GHS分類や危険有害性情報から、健康への影響と火災・爆発などの危険性を把握する
3 組成及び成分情報成分名、CAS登録番号、含有率を確認する
7 取扱い及び保管上の注意
8 ばく露防止及び保護措置
取扱い上の注意、換気などの設備対策、保護具、ばく露限界値等を確認する
9 物理的及び化学的性質
10 安定性及び反応性
沸点、蒸気圧、引火点、反応性、避けるべき条件や混触危険物質を確認する
11 有害性情報吸入・接触等による健康への影響を確認する
15 適用法令安衛法の対象記載や、有機溶剤・特定化学物質などの規制を確認する

併せて「4 応急措置」「5 火災時の措置」「6 漏出時の措置」も確認し、事故時の対応を整理しておきます。

安衛法の対象確認は、SDSの適用法令欄と成分情報を、最新の対象物質一覧と照合して行います。古いSDSの記載だけでは、対象物質の追加が反映されていない場合があります。

情報が足りない項目は、仕入先やメーカーへ確認します

成分や含有率、物性など、使用する評価方法に必要な情報が不足している場合は、仕入先やメーカーに確認します。「情報なし」「分類できない」と記載された項目も、危険有害性が低いという意味ではありません。

不明な情報と、その確認先を一覧に残すと、評価を保留している理由や次の対応が分かりやすくなります。

3 現場で実際の作業条件を確認する

SDSの情報を自社の評価に使うために、実際の作業を確認します。特に、次の条件を整理しましょう。

  • 使用量、含有率・希釈濃度、作業温度
  • 作業時間と頻度、同じ作業者が行うほかの化学品の取扱い
  • 容器や設備の開放状態、換気設備とその使用状況
  • 蒸気・粉じん・飛まつが発生する場面や、皮膚・眼への接触
  • 使用している保護具の種類、材質、使用・交換の状況

例えば、同じ洗浄剤Aを使っていても、作業を分けて整理すると、確認すべき点が見えてきます。

作業の例現場で確認するポイント
洗浄剤Aを布に付けて拭き取るぬり広げる面積、作業時間、手への付着、作業位置の換気
洗浄剤Aを容器へ小分けする移し替える量、容器の開放状態、飛散・飛まつ、顔と発散源との距離
設備を停止し、洗浄剤Aで清掃する日常作業と異なる姿勢・場所・換気条件、設備内部への立入りの有無

このように、薬品名だけで評価をまとめず、実際に人が接する場面を確認します。使用量や換気、作業時間、接触状況などは、リスクの見積りに影響します。

清掃・保守点検など、普段と違う作業も洗い出しましょう

通常の運転中は設備が密閉されていても、容器交換、設備の開放、清掃、保守点検などでは作業条件が変わります。作業手順書と現場の話を照合し、こうした作業も評価対象として整理してください。

臭いの強さや「今まで事故がなかった」という経験だけで判断せず、SDSの情報と確認した作業条件を使って評価します。

4 作業に合った方法でリスクを見積もる

CREATE-SIMPLEなどの支援ツールを活用できます

厚生労働省のCREATE-SIMPLE(クリエイト・シンプル)は、化学物質の情報と作業条件から、吸入・経皮吸収による健康影響や、物質の危険性の見積りを支援するツールです。評価方法を選ぶ際の一つの選択肢になります。

使用するときは、公式ページから最新版とマニュアルを確認し、自社の物質・作業が適用範囲に入るかを確かめます。

入力時には、成分名、含有率、物性、取扱量、換気、作業時間などの意味と単位を確認してください。例えば、取扱量は、ツールが指定する1回の量や連続作業での1日の量などに合わせて整理します。

混合製品は、評価する成分や混合物としての情報を、採用する方法に合わせて使います。含有率が最も高い成分だけを、根拠なく代表として選ぶことは避けましょう。

健康への影響と、火災・爆発などの危険性を確認します

蒸気や粉じんの吸入に加え、皮膚・眼への接触や、引火・混触など、該当する危険有害性を確認します。健康への有害性と火災・爆発等の危険性の両方がある場合は、両方の評価が必要です。

CREATE-SIMPLEには、化学反応や設備のプロセス全体の危険性など、十分に評価できない範囲があります。作業の特徴に応じて、別の手法や測定、専門的な検討を組み合わせます。

濃度基準値が設定された物質を取り扱う屋内作業などでは、推定結果に応じて実測による確認が必要となる場合もあります。ツールの判定と、適用される規定を併せて確認してください。

5 リスク低減対策を実施し、効果を確認する

物質の変更、設備対策、作業方法、保護具の順に検討します

評価結果を基に、次の優先順位でリスクを下げる方法を検討します。

  1. 危険性・有害性の低い物質や方法への変更:薬品の代替や、使用する工程自体の見直しなど
  2. 設備による対策:発散源の密閉化、局所排気装置の設置など
  3. 作業管理による対策:手順の改善、立入りの管理など
  4. 適切な保護具の使用:対象物と作業に合う呼吸用保護具、保護手袋等の選択・使用・管理

保護具の効果を反映した判定だけでは、物質の変更や設備改善の余地を見落とすことがあります。呼吸用保護具の効果を考慮しない評価も確認し、より優先順位の高い対策を検討します。

有機溶剤や特定化学物質などに関する個別規則が適用される場合は、定められた措置も必要です。また、リスクアセスメント対象物へのばく露を最小限度にする義務や、対象となる屋内作業で濃度基準値以下にする義務なども確認します。

対策後の条件で再評価し、現場でも確認します

例えば「開放容器をふた付きにする」「換気設備を改善する」といった対策案について、変更後の条件でリスクを見積もり直し、効果を検討します。実施する対策には担当者と期限を決め、実施後は現場で運用状況を確認しましょう。

設備が設置されていても、実際には使われていない、作業位置と合っていないなどの場合があります。評価に使う条件は、実際の状態を反映させることが大切です。

6 結果を記録・周知し、変更時などに見直す

評価結果と対策を、作業者が確認できる形で残します

リスクアセスメントを行ったときは、対象物の名称、業務の内容、評価結果、講ずる措置の内容を記録し、対象業務に従事する労働者へ周知します。

実務上は、評価日、使用したSDSの改訂日、入力条件とその根拠、対策の担当者・期限、実施状況なども併せて残すと、次の評価や担当者の交代に役立ちます。

結果は、作業場での掲示・備付け、書面の交付、作業場で常時確認できる電子記録など、法令に沿った方法で周知します。記録は次回のリスクアセスメントまで保存し、次回が3年以内の場合は3年間保存します。

この期間はリスクアセスメント結果の記録についてのものです。措置等の記録や、がん原性物質に関する作業記録などは、別途適用される保存規定を確認します。

薬品や作業条件が変わる前に確認できる仕組みを作ります

対象物の新規採用・変更、作業方法や手順の新規採用・変更、危険有害性等の変化があるときなどは、法令でリスクアセスメントの実施時期とされています。

また、設備の経年劣化や作業者の知識・経験の変化、過去の評価が確認できない場合なども、指針に沿って見直しを進めます。購買や工程変更の情報が化学物質管理者へ届くよう、社内の連絡方法を決めておきましょう。

SDSの整理から、評価・対策・社内教育までご相談いただけます

SDSがそろっていても、作業条件の決め方、評価する成分の選び方、結果を受けた対策などで手が止まることがあります。

あさぎ行政書士事務所では、産業廃棄物業界での現場・技術管理の経験を生かし、社内の担当者が化学物質管理を進めるための実務を支援します。

  • 使用薬品・SDSの整理と対象物質の確認
  • 現場の作業条件の整理、リスクアセスメントの実施支援
  • リスク低減策と改善の優先順位についての技術的な助言
  • 担当者向けの実務説明、従業員向けの勉強会
  • 安全衛生委員会等での技術的な助言と継続相談

初回は、現在の状況とお困りの点を伺い、必要な支援の進め方をご案内します。個別の調査・評価・社内研修等は、内容と費用をご確認いただいた上で実施します。

化学物質リスクアセスメント導入・運用サポートの内容と費用を見る

SDS整理・化学物質リスクアセスメントについて、まずは御社のお悩みをお聞かせください。

無料相談はこちらから

無理な営業は一切行いません

参考資料